第35回原宿句会
平成5年3月22日

   
兼題 桜 踏青 メダカ
席題 接ぎ木


            東 人
木を締めてより霧を吹き接木かな
青き踏む奈良にをさなき阿修羅像
夕桜でんでんだいこ抱き眠る
鰭で抱く恋の目高の裸身かな

            利 孟
ブラウスの貝の釦や青き踏む
たも網の首の曲るや目高追ふ
窄めたる口にくはへし接穂かな
後ろ手の掌を組み替へて桜守

            希 覯 子
目高飼ふ小児病棟餌当番
車椅子押して青きを踏みにけり
露天風呂排水口に花の塵
砧選る口に銜へし接穂かな

            英 樹
十年経し父の接木の瘤太し
青き踏む先へ先へと吾子走る
鳥影に驚きやすき目高かな
まなうらに父の薄眉花篝

            千 恵 子
掬はれて掌の池泳ぐ目高かな
接木する父に来年しかと来よ
サイレンを遠く聞きつつ花見かな
よく笑ふ素足の子もいて青き踏む

            白 美
接き木する寡婦の薬指の指輪かな
三つ編みを編みつほどきつ青き踏む
香具師の声響きて桜月夜かな
目の細き従妹の脚に目高かな

            梅 艸
桜月夜Eroticismと綴りけり
山桜万朶三日のココニイルゾ
めだかスイ苦もあらんものをめだかスイ
五一%のとまれ自足か青き踏む

            武 甲
巡礼の白装束や青き踏む
接木する老父に民家の影迫る
浜風や球児の運ぶ花便り
目高追ふ新任教師の白き足