第48回原宿句会
平成5年12月11日 豊島勤労青少年センター

   
歳末忙中閑の巣鴨吟行会


            東 人
頭をなでる列のびて行く小春かな
弥次郎兵衛のゆっくり回る蕎麦湯かな
着ぶくれてたれすすり喰ふ串団子
嗅ぎわくる七味の辛さ年惜しむ
文豪の墓誌に名の増え十二月

            天 眠
木の葉降るとき手を休め七味売り
剣豪の墓に殺気の鵯猛る
ご利益に嚏を加へ線香売り
踏切に果の庚申の日も過ぎぬ
蕎麦掻や人とはぐれし地蔵前

            梢
願ひ水顎に流れて年暮るる
旧街道今もゆたんぽ吊し売る
霊園の塀ただ長し冬木の芽
八つ目やの匂ひ流れて町小春
冬日差し笠新しき地蔵尊

            利 孟
毛糸帽ふくらませ置く露店かな
駄菓子屋に積まるサンタの紙の靴
餡さまざま焼き色の濃き太鼓焼
ひやかしの客に応へて懐手
門前の屋台花屋の菊尽くし

            白 美
金襴の帯で小屋掛け冬の市
黄落や墓石積み上げ無縁塔
冬日和ラメの紐もつ竹の杖
柿渋の地蔵の笠や冬麗
水飛し手押しポンプの霜囲ひ

            ま こ と
比翼塚背ら燃え立つ青木の実
瘤隆と冬日すべらすさるすべり
病める手のごとく枝垂るゝ枯木かな
新墓のビニール被り実千両
冬ぬくし水かけ仏の水光り

            法 弘
冬日照雨庚申塚にやりすごす
冬うらら切火を受けて箸を買ふ
おどろしき火の粉や恋や大焚火
寒禽の優に四、五十墓の原
銀杏散る石屋「石治」の石置場

            杜 子
小春日や塩大福を並び買ふ
腕組んで立ち話する暦売
散紅葉銅の笠きて坐す地蔵
冬薔薇に向かひ弘法大師像
冬うらら芥川家の墓地問はれ

            み ど り
冬野菜積みやつちやばのがらんどう
寺の笹昨夜の時雨のしづくため
照るもみじ無縁仏へ日を分つ
冬日濃しけぶる地蔵に手をかざし
形よき菰巻黒きひも垂るる

            千 恵 子
山茶花や夫婦茶碗の並ぶ墓
地蔵洗ふ列幾曲り冬日向
新しき塔婆に搖れる冬陽かな
手相見の咥へ煙草や冬うらら
提灯の破目に透ける冬陽かな

            智 香
冬ざるる堂に閻魔の口赤き
野菜市場の閑散として枯葉舞ふ
慈眼寺の冬眼たしかにしだれ梅
冬日受け洗ひ地蔵のつややかに
木枯しに地蔵の傘の金作り

            香 里
手際よく店開きする息白し
マスクして墓参りする老一人
冬うらら句帳片手に地蔵前


            希 覯 子
ことごとく地蔵を冠す街時雨
銅の傳八笠や冬地蔵
冬紅葉ついで詣りに比翼塚
高岩寺大神宮の暦売り
葉牡丹の迷路に雨滴ダイヤ光

            京 子
慈眼寺に冬芽伸びたり陽のぬくき
毛糸帽売り子の英語たどたどし
谷崎の墓を彩る櫨紅葉
這い松へザンギリシャッポ霜囲い
冬日和墓前の語らひ姉妹