兼題 紅葉狩 夜長 赤とんぼ 席題 石榴 |
東 人 風乾く日は高々と赤蜻蛉 石榴裂けしままに乾びし異人館 九時以降絶飲食の夜長かな 被写体の見目良き一樹紅葉狩 沢風に裾を捲くられしゆうめい菊 希 覯 子 海路より訪ねし離宮紅葉狩 赤蜻蛉止まりに順のあるごとく 点滴の秒を刻みて夜の長き 数枚の稔り田名残り巾着田 実石榴の百歯を見せる笑ひかな 美 子 石榴の実前歯で噛んで童女めく ファックスが届きて後の夜長かな 山頂に赤とんぼ群れ人が群れ 紅葉狩体内脂肪燃え立たす 秋刀魚臭き掌で湯気の飯大盛りに 千 恵 子 長き夜や火星に生き物ゐる話 自転車を降りて押す坂金木犀 原っぱの空の四角や赤とんぼ 一枝をリュックに挿して紅葉狩り 無きつのる子ののどちんこ石榴落つ |
武 甲 アムラーの肌まだ黒き紅葉狩 逆上がり出来し破顔や赤蜻蛉 真犯人探しあぐねる夜長かな 秋冷の気圧配置や村暮れる 利 孟 水筒のぬるき紅茶や紅葉狩 木のベンチ脇に伺候の赤とんぼ 実ざくろや寺の並びし魚籃坂 指遣ひ譜に書き込める夜長かな 露けしや音立て動く木偶の顎 梅 艸 背を丸めインターネットの夜長かな 紅葉狩一年ぶりのスニーカー 遠吠えのクラクション一つ長き夜 赤とんぼ買ひ手の付かぬ築五年 法 弘 帯の間に挾む名刺や紅葉狩 赤とんぼ地上にルカの福音書 実石榴や村のどの家も同じ姓 塾の子を駅に迎へる夜長かな 連如が子指折り数ふ夜長かな |
白 美 紅葉狩茶店の椅子を譲りあふ 鉛筆の芯のまるみて夜長かな ゆらゆらとためらひ見せて赤とんぼ 満月や心に疚しきこと無きや 笙 夕風に茎から揺れて吾亦紅 履き慣れし靴を頼りに紅葉狩 切れぎれの汽笛聞きゐる夜長かな 飛ぶ雲と共に流れて赤蜻蛉 健 一 軽々と向きを自在の赤蜻蛉 実石榴やすつぱき味の今昔 掛け時計長き響きの夜長かな 魚影の早くなりぬる秋の川 遠景の仰ぎしばしば紅葉狩 義 紀 くねくねと車連なる紅葉狩 簿記論に居眠り多き夜学生 実石榴や彼の日に言へぬ言葉あり 新しき三輪車ある良夜かな 二組の親子行き交ふ紅葉狩 |
正 紙吹雪メークドラマの夜長かな カナダより届く便りや紅葉狩 爽やかな声聞く人も爽やかに 赤とんぼふと童心に立ち返り 実る恋実らぬ恋や石榴笑む 香 里 とりためしビデオ並べて世の長き フイルムは残りわづかに紅葉狩 |