兼題 かすみ草 北寄貝 仏生会 席題 しやぼん玉 |
東 人 世の塵の彩をたわめて石鹸玉 灯の入りて白の浮き立つ花御堂 霞草花の盛りに捨てらるる 塩水で舌引つこませ北寄貝売 夜桜を見上げ油断の腰構へ 白 美 大甍逆にのせてしやぼん玉 青塗りの象の張り子や花祭り 尻にまだ列車の小揺れ北寄貝 また助演賞受く女優霞草 いろ失せし都の桜年ごとに 美 子 姥貝やしやきしやきと逝く名女優 花束の余白を埋づめ霞草 鳥が餌を食みし嘴跡春の土 仏生会手向けに稚児の薄化粧 巣立つ子の母逞しき高笑ひ 利 孟 乳呑子に吸はせし指の甘茶かな 親のゐる辺りうかがひ入学児 こぢ開けし舌の蠢く北寄貝 花束に箱より加へかすみ草 しやぼん玉売りまき散らす陽の欠片 |
千 恵 子 北寄貝岬淋しといふ便り 堰越えてよりのゆるみや花筏 天を指す指の乾きて甘茶仏 仮縫ひの鏡に吾と霞草 吹き流れ行く先は空シャボン玉 希 覯 子 小童の路地ほしいまま石鹸玉 浅草寺裏から拝み植木市 みちのくに教へ子がをりほつき鍋 あくまでも添へ花として霞草 家苞は人形焼と佛生会 義 紀 またひとつ破れし恋やシャボン玉 いつのまに側にゐる人かすみ草 大黒の細き腕や仏生会 春暁のラジオ講座やABC 北寄貝食めば現はるオホーツク 正 北寄貝鮨屋で開く和英辞書 彗星の大きく見ゆる仏生会 藤匂ふアルハンブラの赤き壁 歌姫の笑みこぼれたり霞草 故郷の空に帰りてしやぼん玉 |
法 弘 しやぼん玉キリンの角に当たりけり 夕月のかかりて暮るる花御堂 かすみ草いたく踏まれて逮夜かな 梁にきしむ柱や戻り寒 春陰や勃起に隣る北寄貝 健 一 佛生会来る人絶えて香の部屋 北の香の皿に一盛り北寄貝 花の艶透ける包みの霞草 うちけぶる雨に背伸びの若緑 シャボン玉いくつかの舞ひ声で追ひ 萩 宏 壁に付き触れても割れぬシャボン玉 大漁とかざす両手に北寄貝 花祭り早寝の祖母の鼾かな ドレスより輝く髪のかすみ草 去年より小さき渦の栄螺かな 笙 寿ほぎの髪を彩るかすみ草 仏滅の空晴ればれと花まつり ストローを入りつ出でつつしやぼん玉 うらうらと一日過ぎて春の風邪 節高き指に打たれて北寄貝 |