第310回四天句会
平成27年6月16日

   
兼題 白南風 雨蛙 紫陽花
席題 梅雨



  利孟
白南風や抱瓶で注ぐ島の古酒
墓所の草引けばまばたき雨蛙
梅雨深し四駅つないで地下通路
泉水の湯屋の壷庭蚊遣り香
網戸繰り宅急便に出す判子

  あやの
濃紫陽花窓の日を入れ顕微鏡
白南風のデッキに並び軍楽隊
細き葉を分けて二匹の雨蛙
大鍋に煮出す赤紫蘇昼深し
オルゴール館の木の壁梅雨にいる

  恵一
白南風や肩揺すり吹くサクソフォン
歩兵銃立てて墓標に夏あざみ
紫陽花を一枝肱を濡らしつつ
雨蛙姿なけれど声繁き
屋上のプールみづいろ星あふれ

  武甲
夏帯や浪の蒔絵の乱れ箱
梅雨空を見上げ思案のツアーガイド
紫陽花に触れては揺らし行く電車
白南風や神輿くり出す祈願祭
同化して身じろぎもせず雨蛙

  雨竜
濃紫陽花駆け込み寺の急な磴
雨蛙足を揃へて剥く目玉
白南風に島の仔牛は背を向けて
替え靴を抱え通勤梅雨長し
滝の水分けて行者の白衣かな

  義春
白南風の浪に揺られてぽんぽん船
紫陽花や大師の濡れた網代笠
筍のもたげる土や破れ鳥居
雨蛙目玉は緑ならんとね
大傘を差し悠々と梅雨深し