第327回四天句会
平成28年11月10日

   
兼題 木枯し 新走り 立冬
席題 夜寒



  利孟
大屋根の闇に息づき新走り
小春日や柴で蓋する炭俵
夜寒かな納戸の暗き裸球
胸抱きの子にあれこれと冬に入る
木枯しに磨かれ薄き日の光

  あやの
直会や宮司酌して新走り
長電話にマグのコーヒー夜寒かな
空車タクシー連なる夜道冬に入る
短日や名物メンチに並ぶ人
木枯しに吹き払はれて歌舞伎町

  恵一
さざんくわや鼻梁の失せし磨崖仏
冬に入る竪穴遺跡に薄き影
木枯しや微笑みうすき観世音
新走り並べ神社の利き酒会
マスターの注ぐ夜寒のグラスかな

  比呂志
木枯しや白く粉の噴く膝小僧
植ゑ込みに光る猫の目夜寒かな
閑散のシュプレヒコール秋深し
パソコンの遅きアクセス師走かな
立冬や堀のボートの色褪せて

  義春
来賓の駐在駆けて運動会
隣の子預かり寝かす夜寒かな
蘊蓄を語り一献新走り
木枯しや始発電車を待つ親子
立冬や崩れ校舎に波の音

  武甲
冬立つや駅伝走者の白たすき
小春日や気ままに途中下車をして
新走り限定入荷の大見出し
凩に丸刈りとなる並木かな


  雨竜
ガス灯に煙る雨脚冬立ちぬ
瓶の首つかみ注ぎ合ひ新走り
木枯や昔話の祖母の声
冷まじや南アジアの雨来る
白壁に夕日の落ちる夜寒かな


  翠江
冬に入る富士のお山の薄化粧
着ぶくれの己が姿に苦笑ひ
酒粕をこんがり焼いて醤油付
木枯らしに背中押されて一万歩