第339回四天句会
平成29年11月9日

   
兼題 落葉 鴨 立冬
席題 颪



  利孟
托鉢僧落葉隠れの径下る
影踏みの長き影追ひ冬立つ日
あたふたと降下し鴨の陣を組む
電球の数多昼より酉の市
渦巻いて筑波颪の土埃り

  あやの
冬に入る膝を伸ばせば音のして
落日の湖畔にさはぎ鴨の群
あやとりの亀ひざの上に歩かせて
竹林にもののけのゐて比叡颪
振り向けばそこは昔よ落葉道

  比呂志
忙しなく水面を叩く鴨の嘴
舌を焼くほどに温めておでんかな
苔のむす庭に波なす落葉かな
山門を潜りて凛と冬に入る
身震ひを気合に伊吹颪かな

  義春
蜜柑山尽きて岬となりにけり
鴨の鳴く隅に鴨塚浜御殿
舞ひ揚り落葉一葉の谷渡る
宿坊の勤行に座す今朝の冬
比叡おろし徹夜覚悟の火消組

  恵一
いつせいに湖に皺寄せ北颪
奈良晒の布巾漂白冬に入る
銀翼の軽飛行機や紅葉晴
自転車の籠に落葉の一、二片
子の声に列なし鴨の泳ぎ去る

  雨竜
冬立つや櫓櫂軋ませ渡し舟
北おろしひとつふたつと灯火消ゆ
翼鏡に日の当たりたるはぐれ鴨
秋花火一万発の音拾ふ
雨上がりしんなり撓る落ち葉かな