第350回四天句会
平成30年10月11日

   
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兼題 宵闇 夜なべ 秋深し
席題 秋灯




  利孟
秋灯し古書に手刷りの蔵書票<
暗き灯に使ふ残り湯夜なべ果つ
宵闇や瓦斯燈音を立て淡く
スクロールして読む季寄せちちろ鳴く
秋冷や粒を数へて飲む薬

  比呂志
夜なべかなデジタル写真の補正して
秋深し路地の入り組む神楽坂
妻と肩並べて剥くや丹波栗
宵闇の付かず離れず靴の音
秋灯し蝋燭の穂の長く伸び

  あやの
鉤の手に進む回廊秋深し
宵闇の家並を縫ひてはくびしん
膝に置く遺作の器秋灯し
久方の再会の笑みいわし雲
夜なべして楽し疎ましバザーかな

  武甲
照紅葉心経唱ふ声澄みて
秋深し子供歌舞伎の芝居小屋
秋耕の畝に措かれし母の鍬
縄を綯ふ音の静もり夜なべ果つ
宵闇や三味線の稽古の音漏れて

  恵一
補陀落へ海渡る僧秋深し
夜なべしてネッカチーフに刺す名前
宵闇につなぐ手放し別れけり
雨粒ばかり映るテレビや台風裡
秋灯下電柱の陰男立つ

  義春
秋灯し所々に黄染みの文庫本
秋深し雑魚の動かぬ潮溜まり
さての声残してぢいぢ夜なべかな
蟷螂の羽拡げれば天狗風
宵闇の駅での別れ十五歳

  雨竜
秋灯すバッティングセンターの打撃音
秋深し薄青空のはぐれ雲
次々と宵闇迫るいろは坂
夜なべして鼻ちやうちんの二つ三つ
沢道は立ち入り禁止オニヤンマ