第11回 平成9年4月25日
投稿句会


会田比呂
道中の緋色日傘の逆手持ち
遠足や笛鳴らしては列正す
念仏の語尾口中の濃山吹
風薫るステンドグラスの朱のイエス

岩本充弘
雨垂れの輪の広がりや桜冷え
先生の背に眠りたる遠足児
風光る吾が闘魂の力瘤
蒸気吐くコツトンウエーに風光る

小又美恵子
列車でと母より賜ふ夏みかん
遠足の列の輪となり眠り猫
蘖の読経で増えし代の数
青嵐景色とスカート引つ張れり

茅島正男
遠足や列の乱るる丸木橋
遠足や週間予報「明日は晴れ」
遠足や父も昼飯いなり寿司
筍と生家を包む新聞紙

田中鴻
山肌の斑模様に萌ゆ若葉
遠足の園児はしやぎてお昼時
山吹きや目立ちて咲けり林中
公園の見晴し台に風薫る

田仲晶
ビル窓を拭くゴンドラや風薫る
うたかたの風を掬ひて糸ざくら
溶接の火花したたる青葉冷
先生を越すしんがりの遠足子

高島文江
風光る垣に干したる子供靴
一輛を占め遠足の子らの声
遠足の黄旗青旗東照宮
切れ長のまなこの地蔵風光る

武田肇夫
遠足の子ら駆け巡る滝桜
遠足やいこいの丘に立つ二人
遠足のリユックを覗く顔と顔
菜畑を黄金に染めて風光る

手塚一郎
盛場の路地の暗がり春の星
横顔に日ざし緑や風光る
初蝶や追ひつ追ひぬき飛び消えし
風薫リルーズソツクスの女子高生

永松邦文
麦藁のかほり抱きて石鹸玉
新人の銀のピアスに風薫る
濡れ蚯蚓遠足の列乱れけり
新ビルに遠足の列吸ひ込まれ

仁平貢一
風光る竹寺で食ぶ粥の膳
遠足の足拵へし前日から
さらさらと川面に小判風光る


福田一構
岩を根で抱き満開の山桜
遠足や喜々と靴ひも結びけり
春陰やけぶる古刹の甍かな
蜘蛛の糸朝日にゆらり風薫

堀江良人
遠足の子の隊列に犬遊ぶ
田植ゑ機を広田に残し昼餉かな
遠足の子の団去りし停車場
校庭の樹々の香を乗せ南吹く

三澤郁子
遠足の列吊橋に間延びせリ
上リホームに生徒の溜まる余花の駅
青嵐鳩のよく啼く日なるかな
杉落葉踏む靴底の湿りかな