第32回 平成11年1月22日
アーバンしもつけ


森利孟
軒氷柱廃兵院のよろひ窓
橋くぐるとき羽根休めみやこ鳥
蕊の招ぶ陽に満開の寒牡丹
煤染みの火鉢に噛ませ銅の箍

会田比呂
沢水の草に氷柱として縋る
呼び水も呼び出す水も寒の水
岩つらら太さ変へつつ地に届く
日の陰ははや塔の辺に冬牡丹

岩本充弘
源流の那須連山や軒氷柱
宿坊に泊まり二夜の軒氷柱
冬耕の音一村を包みけり
民宿の手酌の夕陽寒牡丹

石塚信子
汁椀の香りに温くむ軒つらら
つひつひと目より買ひ足す年の市
竹垣の女結びや寒牡丹
冬の原思ふ存分風哭かす

茅島正男
寒の入り両手で包む湯呑みかな
敷藁に胸まで漬かる寒牡丹
跳ねあがるしぶき集めし花氷
軒の下一歩速める屋根氷柱

川村清二
軒下のつららに輝す朝日かな
垣根より落ちて道路の寒ぼたん
定年を迎へし年の初詣


佐藤美恵子
滝登り氷柱を入れて祝杯す
粉雪を丸き背に乗せ戻りけリ
ザイル垂る青き氷柱に爪の跡
藁の中蕾抱きて寒牡丹

田中鴻
軒下の氷柱落下し地に立てる
藁苞を羽織りて咲ける寒社丹
北風においでおいでの野辺の草
あちこちと風向き示す氷柱

とこゐ憲巳
ウイスキー注げば氷柱音走る
また一日命延びたや寒ぼたん
桟橋の杭に舫ひの氷柱かな
落ちる間に大燥ぎして氷柱突き

永松邦文
煮凝りを加へ一人の朝の膳
源泉のにほひ硫黄の軒つらら
おほらかにヴイオラの調べ冬館
日溜まりの駅越えてゆく冬の蝶

仁平貢一
軒氷柱秩父の宿の露天風呂
越前の雪の深しと旅だより
茶室へと飛び石つづく寒牡丹
寒牡丹雫とともに崩れけり

福田一構
黒々と無心といふ字筆始
みちのくの氷柱の宿の部屋暗し
山内の順路の角の寒牡丹
子等の手の氷柱そのまま凶器めく

へんみともこ
遠巻きにレンズを覗く防寒帽
春隣挙ハンドクリーム買ひ足して
軒氷柱落としシヤツター開き出す
青空を切り取る窓の冬の蠅

堀江良人
境内の欅透かして初明り
添寝なき赤子の如き寒ばたん
雪予報外れし朝に友逝きぬ
病晴れ軒の氷柱を素手で折る

三澤郁子
夕日いま寒の牡丹に色重ね
桟橋の桁を抱えて大氷柱
一花よりみなぎる力寒牡丹
廃校の軒の氷柱の日を弾く