すぎ45回

  
第45回 平成12年2月29日
アーバンしもつけ

s 会田比呂
祖母の手の繕ひ美しき雛の箱
鶏の遠出の増えて山笑ふ
春雷や眉根に青き癇の虫
蒼天へ梅満開ぞ癒え賜へ

岩本充弘
古書市の奥千本の梅香る
還暦を迎へし朝や梅二月
梅香る野の追憶の母若し
少女らのそれぞれ電話山笑ふ

大垣早織
新色の口紅試す梅日和
独り居の爪を噛む癖春炬燵
梅月夜祖母の昔を語り出す
吾子の手に烏帽子を取られ内裏雛

片山栄機
草萌ゆる月命日の墓洗ふ
真つ先に藪の紅梅咲き出せり
てんでんに伸びたる枝や山笑ふ


川村清二
梅の香を添へてお点前野点かな
竹皮にお握り三つ山笑ふ
小林美智子
梅一枝挿頭し晴着の着付け終ふ

佐藤美恵子
説明書片手に飾る初雛
店先に辞書の山積み山笑ふ
山笑ふ写真撮り合ふ展望台
白梅の幹の太さに苔の青

田中鴻
通勤の満員バスや山笑ふ
老木のことに盛りて梅の花
香の立ちて一輪開く鉢の梅


仁平貢一
分校の生徒六名山笑ふ
転勤の荷の山積みに春の雪
四阿を吹き抜ける風春めけり


とこゐ憲巳
淡雪や老いし女将の黄八丈
送別の挙手の礼して花吹雪
「贈る言葉」唱ひて今朝の山笑ふ
笠雲のかかる男体山春の雨

福田一構
余寒なほ妻に病歴ひとつふえ
日曜の遅き朝餉の初音かな
老梅に杖立てかけて昼餉かな
男体山の薙くつきりと笑ひけり

永松邦文
打掛を選びし朝の梅真白
春の雨ヒマラヤ杉の針光る
春めくや大観覧車試運転
筆太に名物とあり桜餅

へんんみともこ
回覧板縁側で受け梅日和
山笑ふ水を湛へて光る沼
出棺を壁の雛の見送れり


堀江良人
北の空光わたりて春立ちぬ
鉄塔の朱色くすみて山笑ふ
鳶を追ふ烏の気負ひ山笑ふ
田一面覆ふ新雪日をはじき

三澤郁子
重連の機関車きしり山笑ふ
ふるさとは城址の山よ梅日和
白梅や賢人の像前かがみ
紅梅の空の彼方の富士山ま白