第50回 平成12年7月21日
アーバンしもつけ


へんみともこ
籐椅子の母より欠伸もらひけり
磨きたる窓に近づく夏の雲
梅を干す母の姉さん被りして
日盛りの空へ錐揉むヘリコプター

堀江良人
時刻む如魚はねる日盛りに
植込みのやぶ蚊を連れて猫戻る
稲妻の遠のきあとに三日月
山百合の車窓に迫るローカル線

三澤郁子
踏切の長き警鐘日の盛り
三四郎池に病葉散る日なり
鳰の巣の水漬きて雛の泳ぎ出す
夕風や箸のはじめの冷奴

大垣早織
冷奴列島なべて晴れマーク
自転車のペダルの重き日の盛り
広がりてゆく夏空へシャツを干す
大石に鯉の身を寄す日の盛り

片山栄機
雷鳴の轟き町の屋根揺らす
子の遊ぶ袋小路の氷店
冷奴規則正しく切り分ける
日盛りや蚯蚓干らびる墓参道

川村清二
冷房の特等席は猫のもの
あれこれと迷ひあげくの冷奴
古蚊帳や捨て迷ひし狭き部屋
日盛りや我慢過ぎたる温度計

佐藤美恵子
日の盛り遠くに水の音のして
朝もぎし胡瓜を刻む昼餉かな
熱き喉へ一気に流る冷奴
日盛りや木のざはめきに合羽出す

田中鴻
日盛りや家族総出の草野球
預かりし孫に揚げする藍浴衣
炎昼の我慢比べに声援者
昨日出て今日の夕餉の冷奴

栃木昭雄
日盛りや写経の妻は息殺し
拳銃を納め夕餉の冷奴
日盛りや座敷童は蔭に入る
団欒の風となりけり冷豆腐

とこゐ憲巳
箸先の老いても確か冷奴
一切れのメロンに曇りガラス皿
そこここのどぶ板の反る日の盛り
日盛りや学校堀の鯉眠る

永松邦文
右の手に過去の傷痕冷奴
高原の鉄路揺らめく日の盛り
地に映る影と遊びて揚羽蝶
酔ひ醒めに漢冥利の冷奴

福田一構
親子孫そろひ酒好き冷奴
魯山人写しの酒器や暑気払ひ
暑気払ひ犬とたはむれ酔さます
老いてなほ竹刀の手入れ夏袴