第62回 平成13年7月28日
やしお・すぎなみき合同句会

兼題 ダリア 花火



  川島清子
捨煙草かすかに燻り花火果つ
踏台にして定らず籐寝椅子
稲妻や遅々と進まぬレジの列
海へ向くローマの遺跡ダリア咲く

  片山栄機
病院のドアを揺らして大花火
ダリア咲かせて開通の交差点

  川村清二
蝉時雨通り過ぎても耳にあり
夏芝に一息と呼ぶお茶道具

  石塚信子
炎昼の道筋拾ふ選挙カー
まな板に腹開かれて魚涼し
ベランダに干す物あまたダリア咲く

  泉敬子
エアメールのる卓上の緋のダリア
夏燕信濃本流行き来する

  大塚登美子
山開きリュックの紐の色揃へ
緑陰や水飲みに出る猫の鈴
柏手を打てば色増しご来光

  柏崎芳子
裸婦像の横には赤きダリアかな
炎昼や小唄のもるる奥座敷

  田仲鴻
庭石に花を隠して龍の髭
耳塞ぎねずみ花火を追ふ子供
旅にゐて朝の浜辺の花火屑

  手塚須美子
炎天の熱夕刊に残りけり
花火消えまた松籟の浜辺かな
新しき風鈴を掛け客座敷
夏練のブラスバンドのワルツかな

  とこゐ憲巳
手のひらにのりて螢のいよ光る
お茶の間にががんぼの来て賑はへり
音のなき花火に足を止めにけり
誰待つや日傘の影の藤の色

  栃木昭雄
目覚めたる母のベッドに遠花火
膝小僧池に映せる花火かな

  永松邦文
歳時記を開き放しに花ダリア
新しき鼻緒しごきて花火待つ
群青の滝壺を背に石仏
小枕を二転三転熱帯夜

  福田一構
武徳殿の涼風通ふ朱の柱
番犬の濡れた鼻先夏の蝶

  へんみともこ
霧吹きて手熨しで終る藍浴衣
大手町城山あたり花ダリア
番犬の上目づかひの酷暑かな

  堀江良人
藪萱草野川の瀬音遠ざかる
鷺舞ひて青田筑波へ連なりぬ

  会田比呂
風掬ふだけの新しき捕虫網
揚花火重なり合うて紛れざる
講終はる百畳の間や鐘涼し

  三澤郁子
まなかひの闇に五彩の遠花火
歓声のあがる闇へと大花火
空に抜ける音のいくすぢ岩清水
鼓笛隊通りてポンポンダリア咲き

  森利孟
熊蝉の照れ照れと和し油蝉
日除深く下ろして島の消防署
紅こぼすかに揺れ傾ぎ蓮の花
上履とダリアの束と登校日
言ひ出せぬ一こと線香花火燃ゆ