第63回 平成13年8月25日
やしほ・すぎなみき合同句会
兼題 晩夏 生身霊




   泉敬子
★秋暑し黒光りして方位盤
 行く夏の山ふところの少年院
 峡よりの風の涼しき鮎料理
★草茂る辻の軍馬碑晩夏光
★蔵座敷その蔵守の生身霊

   石塚信子
 やはらかき尻の紅色桃求む
 列島に軌跡よろめき台風過
 晩夏光ベッドに添はす車椅子
★ポケットに小銭鳴らして夏の果
 朝涼しふはりと返す玉子焼き
 評判のパン屋の香り涼新た
 鈴虫の抱きて放さぬパンの耳

   永松邦文
★晩夏なり亀の子束子生乾き
 錆浮ぶ小出刃研ぎ上げ夏深し
 だだちや豆噛めばたちまち夏の果て
 秋暑し松に新芽の能舞台
 まみどりの酸橘のたより阿波の国

   会田比呂
 稲妻や幕で仕上ぐる葬の部屋
 鰹塚の供物の乾ぶ陰祭
 行く船の水尾の一すぢ晩夏光
 そが立てし水尾に紛れて水馬

   大塚登美子
 魚見えぬ堀割の底秋暑し
 夏草にキャタピラ埋る耕耘機
 晩夏光値下げの札の重ね貼り
 一杯の酒に舌打ち生身霊

   柏崎芳子
 帰省かな軒を連ねて直売所
 車座に孫も曾孫も生身霊
 メール打つ手のリズミカル晩夏光

   片山栄機
 微醺帯び機嫌上々生身霊
 蝉時雨こもりて杜の暗きかな
 唐辛子漬けるたまりの香を封じ

   川島清子
 生身霊砂糖たつぷり麦湯好き
 独り占めして天心の大花火
 戸隠の奥社全山蝉時雨

   川村清二
 一鳴きを松にささやき秋の蝉
 手花火や子の手に添へる大きな手

   田中鴻
 背を見せて水鉄砲に撃たれけり
 曲りても長さ自慢の糸瓜かな
 生盆の縁者の集ふ宴かな
 生身霊二人の並ぶ我家かな
 流れ星消えて子供ら声高に
 鳴き騒ぐ晩夏の夜の呆け鳥

   とこゐ憲巳
 戦没の霊を鎮めん油蝉
 一斉に街に鐘鳴り終戦日
 闇戻りたるに二の矢の遠花火

   栃木昭雄
 玄関に履物あふれ生身霊
 一徹の皺のやはらぎ生身霊
 種瓜の黄のたつぷりと太りけり

   へんみともこ
 棚経や夫よりおほき子の背中
 夏の夜の隣りに停まる救急車
 ゴスペルの低き調べや晩夏光
 生身霊みなに囲まれ撮られけり

   堀江良人
 出勤の歩み早まる諸処の風
 ふる里や友も己も生身霊
 台風の近づき暗き夕茜

   三澤郁子
 爽やかや空にひろがる湖の瑠璃
 草臥れた、眠いのなどと生身霊
 塗りたての白き門扉に晩夏光
 落蝉に仰向く空のありにけり

   森利孟
 二の丑の汁たつぷりの鰻飯
 晩夏光薄く舌伸べカフェの犬