宗匠の一言

新しき母の遺影の煤払ふ >>声を掛け母の遺影の煤拭ふ
@「新しき」が「母」に掛かるか、「遺影」にか?混乱します
A「煤払う」というと、煤竹でバサバサという感じありませんか

息白く路地を自由に一輪車 >>息白し路地を自在に一輪車
@「息白く」というと、その子ひとりだけの感じ
A「自由に」というより、一輪車は「自在」の方が巧みに聞こえます

観劇にマフラー束ねひざかけす >>観劇の膝にマフラー二つ折り
@如何にも言葉がごつごつしていますね、朗誦する文学です、是非口に出して自然かどうかを見ましょう

口下手の竿師年期の膝毛布
@巧みな句です、ただ、私は「口下手の」は言い過ぎだと思います、「無口」くらいまでかなと

小春日やマラソンランナー溶けてゆく >>小春日やマラソンランナー溶けてゆく
@陽炎の中みたいな感じで、小春日が適切な季語か問題がありますね

彷徨いて鳴く子猫にも霙降る >>彷徨へる猫の鳴き声霙降る
霜枯れの水澄む堤小鷺舞 >>
@子猫は春の季語、出来るだけ「季重なり」、「季違い」を避けるため歳時記を読むことで知識を増やしましょう
A水澄むというのは、秋の典型的な季語です、小鷺も季語性が感じられますね

職退きて夫のはりきる煤払ひ >>職退きし夫の出番の煤払ひ
@なにやら、大掃除がしたいばかりに退職したみたいです、「てにをは」は大切です

煤逃げや肩に食ひ込む背負ひ紐 >>煤逃げといひて重たき背なの孫
@煤逃げは、出来るだけ負担にならないようにというのに、子守を押しつけられた、その面白さを出しましょう

煤払い箒片手に電話取る >>煤箒片手で支へ取る電話
@煤払い/箒となりますが、煤箒で住んでしまうと思いませんか?
A本会では、有季定型、旧仮名遣を基本としています

煤払父の声のみ聞こえをり >>煤払すべて差配の父の声
@大掃除となると父があれこれいう声が耳に残っているというのですから、そう表現したらいかが

弟子僧の帽子かぶりて煤払ふ >>見習いひ僧の帽子や煤払ひ
@帽子と言えばかぶるは当然のこと、余分にいうと後が寸詰まりになります

特製の箒用ひて煤払ひ >>煤払ひまづは箒に柄を接いで
@特製のというと、1000円のではなく、3000円の箒かなくらいでそこには発見がありません
どういう特製なのかを表現することが大切なのです、俳句は

布着たる織りかけの機や煤払ひ >>織りかけの機に布掛け煤払ひ
@「オリカケノキヤ」でないと、中7となりませんが、そんな日本語はありません
A布着るという擬人化は「織機」には無理でしょう、それでなくても、布が掛かっているのですから

初雪をのせて撓むる実南天 >>初雪をのせ南天のしなふかな
@「撓むる」という表現には無理があります
A実南天というのは、南天の実、これが撓むというのも難しいし、季語が重なることにもなります

ひざかけにマフラー二重に電車乗る >>マフラーを二重に巻いて待つ電車
@電車に乗ってマフラーを膝掛けにしたというのですが、どんなものでしょう

膝掛けや受付嬢の細き足 >>膝掛けや受付嬢の細き脚
@「足」「脚」どう違うか、辞書を調べてください、だけど、おじさんの句です

膝掛けをとり店番がおいでやす >>膝掛けを取り店番の客迎ふ
@面白いと言えば面白い、砕けすぎと言われればその通り、普通にした方が良いと思いますが

人混みの熱気押し寄せ酉の市 >>
@酉の市というのは本来そういうもので、その人混みの熱気をどう表現するかがこれからの課題

陽の温み残りし毛布畳けり >>陽の温み残りし毛布畳けり
@自分でこの句に至ったというのは大いなる進歩ではありますが、先行句がそれこそゴマンとあるのです

冬構針を外され花時計 >>針外し冬の支度の花時計
@花時計の冬構えなのか、その他の庭園が冬構えしていてその中の時計の針が外されたのか
すっきりさせた方が良いと思います

降る雪や野生となりて犬駆ける >>降る雪や犬を狂はす野生の血
@「降る雪や」はどうしても「明治は・・」となるので、季語としては難しいです
A野生となりては極論でしょう

流木も無骨に組まれ浜焚火 >>流木の巧みに組まれ浜焚火
@流木も無骨にというと他に何か無骨なものがなければいけませんが、すぐには思いつきません
A無骨に決まったのが流木と思うのです