第81回 平成15年3月9日
特選句は緑色太字で表示
特選句作者を巻頭に、
以下入選数で配列しています
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堀江良人
春一番筑波を越えて荒れつのる
陽を透かし空を覆ひて辛夷咲く
薙埋める白煙を追ふ雪崩音
山宿の夜の静寂へ雪崩音
大塚登美子
鍵つ子の鍵の綾糸鳥帰る
男体山にかかる笠雲花辛夷
鳥帰る寺領の沼のこぼれ羽根
ブルドーザーうなり更地の草青む
へんみともこ
雛飾る小窓に受けし処方箋
暖かや名にルビのつく内祝ひ
鉢植ゑの影のびのびと春障子
山岸に貝持つ地層花辛夷
会田比呂
奔りては組みつ解れつ野焼きの炎
入り口の色濃き鳥居一の午
春雷や目覚め易きは犬の耳
戻り寒上目遣ひの踏まれ邪鬼
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三澤郁子
遠雪崩こだま返しに灯の揺らぐ
花辛夷更地となりし診療所
瀬飛沫のしきり雪解の大谷川
白梅の香につつまれて無人駅
石塚信子
九分粥の匙に滴る春の冱て
空を衝く仏舎利塔や花こぶし
本を閉ぢ消す宿の灯や遠雪崩
紅筆の色を迷へり春時雨
川島清子
ガツガツと喰ふばかりなる恋の猫
山独活の鎌の切り口あらはなり
大雪崩潜む魔の峰ゆけるかな
ババロアの揺れを崩して春炬燵
とこゐ憲巳
春一番新任地への九十九折り
遠雪崩仕事忙しき新職場
旅宿の野風呂を抜けて雪崩音
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栃木昭雄
男体山の薙は雪崩を呑み吼える
この窓の明るさ辛夷明かりてふ
句碑を読む辛夷あかりの中にかな
泉敬子
娘の知らぬわが青春や姫辛夷
梅咲いて耳順の妻のイヤリング
臥竜梅矮鶏の一群放たれて
大貫美代子
語部の来て雪沓を払ひけり
日矢の打ち小波のうつ牡蠣桴
朝光峙つ峰の雪崩痕
片山栄樹
長閑さや現場監督声高に
陸奥へつながる鉄路花辛夷
遠雪崩聞く山里の朝ぼらけ
田中鴻
足跡の雪崩をまたぎて続きをり
分家まで子に持たせやる蓬餠
蓬摘むうからはらから引き連れて
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福田一構
青く澄む富士を眼下に春の旅
ハングルに並べる漢字白辛夷
春暁の電気まぶしきキムチ店
柏崎芳子
いろどりを程良く盛りて雛あられ
春の旅誘ふ便りのカラフルさ
陶土練る指先痛し実朝忌
標幸一
花嫁の白きリボンの花辛夷
雨降れば雨も匂ひて梅真白
春の夜のときに堰音高まりて
森利孟
遠雪崩ライターの火の風に飛ぶ
こまごまと京の定食梅開く
捏ねつづけ濁る水飴花辛夷