第91回 平成16年月1日11日

     耗
☆ 箒目をほろと崩して初雀
  屑籠に反古の山なし去年今年
  勝独楽の疵ありありと見せ止まる

     ともこ
☆ 裁板に箆疵を足し縫初め
  門辺までつづく箒目初雀

     一構
☆ 校庭に土竜土盛る大旦
  手に馴染む竹刀改め去年今年

     栄機
  獄中に流す紅白歌合戦
  黄金の元旦の陽が昇りゆく
  爪赤き手の薔薇の芽を切り戻す

     幸一
  かがり火の爆ぜ音強き年ごもり
  浮き雲の甲斐の空へと初雀
  頂へつづく踏み痕去年今年

     良人
  両の手で食む鰰の一夜干し
  去年今年風は川面を吹き下る

     郁子
  みぎ会津ひだり足尾へ初雀
  父がせしやうに拝みて初日の出

     清子
  包丁が冬至南瓜に喰はれけり
  かたはらの百度石踏む初雀

     登美子
  お手玉のごと離れ寄る初雀

  去年今年携帯電話充電中
     比呂
  粉雪や眠りの浅き看取り癖
  枝痕の残る梁牡丹鍋

     信子
  自販機の灯の道端に去年今年
  正座せる子らに与へる屠蘇の盃

     昭雄
  着水の足裏を反らせ鴨滑る
  陽に祈るかに羽づくろひ初雀

     ミヨ
  俎板を埋める切り飴初詣

     芳子
  追ひ風を蹴って飛び立つ初雀

     敬子
  真っ先に陽受け大樹の初雀

     憲巳
  半掛けにして帯びかばひ新成人

     利孟
  汐かけて洗ふ舟縁初雀
  梁を小突き大音手斧初め
  一片の種火吹き立て去年今年