第97回 平成16年9月19日

     比呂
☆ 鯖雲や在所の唄の節たひら
☆ 蚯蚓鳴く石庭に書く波のすぢ
  地獄絵の端に陽当たる秋彼岸

     登美子
  不揃ひのだんごに餡の秋彼岸
  百歳をあつけらかんと敬老日
  菜園に大き芥穴天高し
  山芋のほどよく土を付け売らる

     信子
  母島に着きしと電話星月夜
  雨纏ひすがれ紫陽花艶めけり
  野路菊の籠にあそばす吹かれぐせ
  朝市の野菜積み上げ秋彼岸

     清子
  蚯蚓鳴く逃げるでもなく追ふでなく
  豪華船虹の輪抜けて出港す
  朽ちかけし煉瓦獄舎の灼けにけり

     憲巳
  答案の癖字読み解き鰯雲
  警杖で探る川原草紅葉
  葦の絮踏みて分け入る警備靴

     ともこ
  爪皮の下駄のまじりて秋彼岸
  蚯蚓鳴くほのと灯りし金灯篭
  オーナーの名を記す棚田秋の空

     昭雄
  夜噺や深々閑と蚯蚓鳴く
  蚯蚓鳴く「一握の砂」開く夜に
  山荘の窓の閉ぢられ今朝の秋


     敬子
  秋彼岸これから先は自然体
  蚯蚓鳴く池畔に小さき椅子ありて

     芳子
  豊作を祝ひし畔の彼岸花

  足とどむあたりしづかに蚯蚓鳴く
     良人
  落日に燃え広がりて蔓珠沙華
  鉄路来る風の乾きや秋彼岸

     一構
  天高しなべて晩学書道展
  北に行く満員列車秋彼岸


     聖子
  みみず鳴く宵闇の風誘ひけり
  闇深む疲れ知らずのみみず鳴く

     鴻
  那須山に立つ噴煙や秋日和

     利孟
  梨を剥く手濯ぐやうに汁こぼし
  大西日受けて猫壜兎瓶
  片ホームだけの停車場刈田風