7月のもう一言

季語の使い方として、季語として働いているかどうかということがある今回の句会の兼題の「髪洗う」をとりあげる
髪は一年中汚れるが、夏の暑さの中で汗をかくなど普段にもまして髪を洗う機会が増える
行水の絵には髪を洗う女性の姿がモチーフとなることが多いなどもこの類である
その結果として、洗い髪という季語も生まれる 今でこそ冬でも髪を濡れたままにしておいても暖房で間も無く乾いてしまうが、洗い髪で自然であるのは夏季限定というのが「季感」というものである
であるから、どんな状態でも「髪を洗えば」夏の句になるかといえばそれは違う
明日は手術だというので髪を洗うとか、退院前に髪を洗うなどというのは、その背景 に暑さが見える詠み方をしない限り、髪洗う」の季語を効果的に使ったことにはならない
季語は、その一言があることで、「髪洗う」のばあい、暑さ、汗、髪を洗う前、後のリフレッシュ感、髪を洗う女性のなまめかしさ、そういったものが俳句を詠む誰にでも常識として、あるいは、知識として共有されるものである


香水瓶青き思ひの詰まるかな  
青き思い」って分かったようで分からない部分あるが、そういう瓶はありますな

ポケットに香水沈め旅鞄  
意味不明

夕涼や墨の香りの筆洗ふ  
墨の香りの筆洗うというのは、ちょっとあたりまえなのでは

元結を解きて明日の髪洗ふ  
そのあと自分で髪を結えるのかという問題はあるが、「解く、解きて」では行には活用しません

黒揚羽悠々閑々日暮れけり  
悠々閑々を出したというだけですが

宿下駄をからころ鳴らし洗ひ髪  
神田川の雰囲気だが、「洗い髪」は夏の暑い盛り、そして暑さが収まる夕方でもある

半錠を母に割りやり夜の秋  
錠剤半剤とは考えましたが、練れた表現とはいえません

細切れにつづく隧道合歓の花  
合歓の花の明るさを持ってきたのが良い

鎌の刃をするりと躱し蜥蜴出づ  
蚯蚓では、鎌は土の中に入れないことが原則でしょう

毎夜死ぬ歌劇のプリマ仏桑花  
歌劇の女ハイビスカスよりこれの方がずっといいと思いますが

声明の廊に染み入る涼しさよ  
もう少しなんか、表現が練れるとよい素材だが

山百合の一花もて濃き風の筋  
読ませるテク先行だな

外つ国の正座は胡座夏座敷  
理屈っぽいな

月涼し一行ごとに筆休め  
一行に筆休め」は変でしょう

役者絵の眼きりりと夏座敷  
祇園祭の屏風飾りなど案外、こういった風は残っているようです

この町の風に乾かす洗ひ髪  
山間地での勤務から、新しい町に移ったという耕さんならではの句

仏桑花地図の台湾赤きまま  
日本領時代の古地図っていうのでもないでしょうな

香水の一滴をもて身を鎧ふ  
武士の合戦の心得なんてのもあって、女性はそれほどに決然たるものかは別に漢には受ける句です

ゆくりなく葉蓋の雫酷暑点て  
裏千家に葉蓋という点前がありますが、それだけのことです

再会のリキュールの黄や夜の秋  
カクテルで再会を祝うというのはやや意味深な感じがありますな

大木立黒装束の川鵜群れ  
黒装束のでは言わなくて良いこと

ハイビスカス島の浦道地熱持つ  
硫黄島ってこんなんですよ、浜辺はありませんが

見せたくてまた見せに来る兜虫  
孫俳句もこれくらいだと結構

洗ひたてられし夕空冷素麺  
夕立後という感じがよくわかりますね

嬌声の三人三様浴衣の娘  
浴衣もそれぞれながら

手習ひは婦唱夫随や心太  
佳作になってますが機知句、それも字面ですので音では理解不能

広縁に風を拾ひて午睡かな  
風を拾いというのが一節でしょう

薫衣香乾び形見の畳紙解く  
形見の古畳紙って、畳紙に包んだ着物なりが形見なんですから

民宿の魚の看板仏桑花  
民宿の魚の看板というのが上手い、仏桑花の配置も良い

柔道の肘の擦り傷髪洗ふ  
柔道の」も余分ながら、訓練終えてとなっては日記

夜の秋厨にかたき水の音  
かたき水音が眼目ながら、案外手垢の付いたフレーズかもしれませんよ

エレベーター好みの香水乗ってをり  
香水が乗るわけが無いので、省略が粗雑過ぎる、好みの香水と言っても、読み手の半分は男だという事を俳句詠みは意識すべきで、自分の愛用の香りと同じということならそれを分かるようにいわなければ

香水や人それぞれにある温み  
香水は、体温と体臭によって個性的になるとされますね

巴里の旅香水点に買ふ石鹸  
石鹸は「しゃぼん、さぼん」と読みましょう

雲の峯頂上見えぬ登山口  
材料のそろいすぎと、登山口も登山の傍題で季重り

薄衣母の香りの畳紙  
畳紙をいうとすぐにこの手の「母」と結びつくのですが、私の畳紙は男物で自分が手に入れたものばかりゆえ、こういう風にはならないのです

佩香を帯に忍ばせ魂迎へ  
佩香をかがされて参った向きが多いように思うが、うちの方ではこんなに構えた魂迎えをしないので

耳たぶの香水の香に酔ひにけり  
香に落ち着かずなら、落ち着かない理由が欲しいのですね

庭下駄に染みきたりたる夜の秋  
庭に置く下駄のことを庭下駄といいます

初蝉の声をふたりで確かむる  
ふたりで」に意味があるとも思えない

娘の部屋に夫を誘ひて遠花火  
娘の部屋には夫は入りたがらないが花火が良く見える部屋、といわれてもそれぞれの家で娘の部屋の状況は違いますし、入りたがらないともかぎらないという個人的事情をこれで理解させることは仲々難しいし、「夫を誘う」というような表現が生々しいものと感ずる向きは少なくないですよ

島唄と煙草の酒場仏桑花  
流行り唄では、仏桑花が単なる置物になってしまう

夜の秋時計の鳴るを数へゐて  
山家」などと場所設定は入らないだろう

袈裟切りの涼しき肩に通夜の僧  
袈裟を掛けているなら袈裟を置く肩の涼しさとすればよい、袈裟だけのというふうに理解されやすい、通夜の僧は安直です

愛でとほす一香水のかをりかな  
シクラメンのかほり」という唄がありますがあれは文字遣いのあやまりです

仄灯す納骨堂や法師蝉  
つくつくし」が私には口になじまないのでこうしましたが

通り雨軒の風鈴泣かせ止む  
泣かせ」が聞かせどころだが、やや臭くもある

仏桑花宿の主の島言葉  
宿の主がちょっと平凡かも

香水やただ今熟年真盛り  
句意一読明快ということは大切です、ただ、こうすると砕けすぎで面白がってとってくれる人とそうは思わない人が出てくるのですがそれは添削者の責任です

髪洗ふ告知の朝の風迅し  
告知が癌か、受胎か、そこまで読み手に任せてしまうのは言い足りないのでは

別れ来て水のたゆらに髪洗ふ  
別れ来てが定まらず、水で髪を洗うという状況と繋がらない

ハイビスカス一日に燃える命かな  
一日花か?

香水や弓に肩脱ぐ袂より  
うまいこと見つけたね、肩脱ぎとなると漢ですから

公園の蛇口直飲み裸んぼ  
蛇口吸い付くといったら、冬の冷えた水道管が肌にぴたっとついたというような状況です

萬緑や一人に広き露天風呂  
たった一人の」というと状況説明、一人に広き」とすれば描写でしょう

胸厚き漢手荒に髪洗ふ  
胸熱きとするとその思いが何かを定めるような詠み方が欲しい

香水のかをりたつぷり志功の絵  
私には理解できなかった