第129回
例会は大型台風上陸予報のため句会中止、通信句会・利孟選のみ

    聖子
◎ 絵手紙の中のトマトが冷えてをり
△ ステーキの血色の滲み梅雨深し
・ 梅雨明けやマネキン長き脚見せて
・ 指圧師の指いきいきと梅雨晴間
・ 口笛のやうに鳴く鳥半夏雨

    登美子
◎ 梅雨明けや長靴洗ふ水眩し
・ 夏座敷足をルの字にして座る
・ 地の米とトマトのリゾット湖の風
  梅雨明ける襟足押さえる濡れティシュ
  エレベーターの白い四角や夏来たる

    芳子
・ 葉脈を透かす日射しや梅雨明ける
・ 片陰を選りて散歩の乳母車
△ 朱の柱のみの史跡や夏蓬
・ 吊忍家並古りたるかくれ里
△ ことほぎの席に角ばり夏袴
    鴻
・ 梅雨明けて光る野山の雲白く
△ 草野球のコーチ熱弁片陰り
・ 石蔵を覆ひて蒼き蔦葎
・ 水鉢の蓮の花咲く日和かな
・ 尾を捨てて磴に隠れし蜥蜴かな

    信子
  一団の早朝詣で濃紫陽花
△ ご朱印に墨くろぐろと梅雨晴間
△ 出羽詣で羽黒の茅の輪くぐりより
・ 片陰を行く白杖の響きかな
  逆転の発想ひとつ梅雨の明

    永子
  バス停に片蔭出来る昼下り
  波しぶき小蟹逃げ出す磯伝ひ
・ 音運び売り声の無風鈴屋
△ 分校へ通ふ小舟や梅雨明ける
・ 船舫ふ港に揚がる大花火
    比呂
・ 覚えなき螺子を踏み当てもどり梅雨
  大松の芯突兀とたたら雲
△ 梅雨明けて人が顔出す天守閣
・ 流れつつ形代の名の滲みけり
  素謡の風に類ふや片蔭

    ともこ
  荷を下げる腕のはみ出し片かげり
△ カーテンに風の絡まり梅雨の果
・ 大安を選びて母の更衣
  コンポスト出でて思案の花南瓜
  雌花には翠の輝き花南瓜

    昭雄
△ 片蔭を拾ひて路地の野菜売
  片蔭に風透く闇のありにけり
  朽ち舟に日の影届く梅雨の明
  梅雨明けや腰に手を置く仏画展
・ 軋む櫓も先代譲り蓮見舟
    敬子
  筍飯記憶に残る母の味
  山小屋の一夜の友ら汗まみれ
  薬草売り効能書きを片陰に
  フランスの香水とどく梅雨明けに
△ 夏の濤鬼の洗濯板洗ふ

    幸子
  片蔭り縫ひつつ踏みて行くペダル
・ 梅雨あがるベランダに咲く傘の花
・ 梅雨出水棚田の水音弛みなし
  つかの間の午睡に農夫皺伸ばす
  せせらぎの届く山の辺草いきれ

    良人
  片蔭の続く山内僧侶行く
・ 片蔭や峠に座する道祖神
  傘をさげ片蔭を行く和服影
  梅雨明けの那須の山の端定かなり
  梅雨明けや香気漂ふ緑樹蔭
    利孟
  思はれるなぞの宣言梅雨明ける
  片蔭や手曳き鞄を立て置きて
  梅雨明けや裏字重ねる吸取紙
  仁王門下でたたみて白日傘
  しやぎり流して七月の京都駅