4月のもう一言

信子
春行きつ戻りつ捌く青の魚
青魚捌くは面白い
土佐水木むかし庄屋の長屋門
月おぼろ夜通し灯るナース室
晩春や声を俄に朝鴉
行く春や教会揺らし水溜まり
聖子
春菜播くはやもふつくら畑の土
花冷えや一人芝居の粗化粧
雨の朝栃の新芽の総立ちに
夕桜一人芝居の李麗仙
花吹雪ゆつくり渡る交さ点
ミヨ
武具飾る電線走る黒き梁
初蛙土管に声を太らせて
和太鼓の撥のあやなす養花天
修復の小暗き寺や土佐水木
とば口に残る燃え止し春暖炉
比呂
鐘朧山川草木みな仏
巻き髪の忽と絡まる花豌豆
土佐水木仏足石の真たひら
きんぽうげ長く伸ばして山羊の紐
おぼろ夜や酒屋のくぐる葷酒門
灌ぎけり浴仏盆に錢沈め
ともこ
霧雨を纏ひて垂るる土佐水木
逃げ水を渡る野鳥の小走りに
牛乳のタンク車過り草朧
花辛夷畑黒々と畝の波
点々と道に土塊朧かな
昭雄
和箪笥の音無く開く朧の夜
音無く開くでは怪談
初蝶来舫の舟の軋みけり
湖を置き男体山白根山笑ひけり
土佐水木風通し良き身八口
母眠る朧夜にある不安かな
がたと膝崩る遺言夢朧
日の当たる土手を独占蓬かな
藁屋根の農家を囲む土佐水木
老夫婦ひねもす睦み芹を摘む
記録的晩雪喜ぶ仔犬達
田圃道稽古帰りの月朧
街中の小川に浮かぶかもの群
敬子
尼寺の鐘もおぼろに六地蔵
演奏会果てて朧の月に逢ふ
巡礼にいとほしまれる土佐水木
遍路は春の季語だけど
いぢめ除け観音前に母子草
虚無僧の訪れかとも編笠百合
獅子口に活けて安らぐ土佐水木
登美子
芽起しの小糠雨降る銀座かな
土佐水木ふれなば雫袖濡らす
土佐水木垂るはしずかな枝の先
放課後を「初恋」歌う友おぼろ
気どらない銀座の柳若みどり
おぼろ夜や舞妓と昇る昇降機
良人
土手埋める芝より野花のおぼろなり
土佐水木帯紙光る新刊書
手を合わすおぼろの口紅の朱唇仏
朦朧と春月いまだ杜の上
おぼろ月白き小花を房に見せ
春霖に空洗われて遠嶺見ゆ
見えるは余分ね
おぼろ夜や土手走り行く救急車
月に雲昼はかすみて夜おぼろ
月と、朧が重なるかね
居酒屋やほろ酔い酒に朧かな
朝きても床を出られず朧かな
土佐水木庭無き家に白恋し
土佐水木は黄色いということくらい知らないとね
白い花寒さにふるえ土佐水木
利孟
縫ひかけの形見の着物おぼろかな
満開の標準木といふ桜
花の川腹に砂利積むダルマ船
朝昼にお茶の時間や土佐水木
花の無き湧き参道の花の宴