10月のもう一言

清子
秋の暮鍬に没日を持ち帰る
名月も楕円に見えし古希となる
天高し青年一途職探し
さんまの香足のみみえる繩のれん
玄関に客待ち顔の秋桜
客待ち顔ってどんなんでしょうか?
信子
名月や観音在す石の町
曲げ伸ばす五分体操柿日和
駅頭の雨の演説秋の暮
諳んずる秋の七草指折りて
秋刀魚煙らす戦後派も老いにけり
芳子
さやけしや的射る音のまっすぐに
尋ねたき事もならずに秋刀魚焼く
リハビリの父の背中や吾亦紅
紅葉谷中より生れし水の音
解く荷の小さくなりて秋の暮
何を解いているか見えない
敬子
秀麗や蔵より父の竹刀出す
七輪の出番となりて秋刀魚焼く
新しく鍋を買ひ足し秋の暮
秋冷や母の遺愛の硯箱
個人的なことは思いが見えない
門川の群れ咲く萩や童子像
何に焦点をあてるか、たぶん童子像だろうがそれを描写していない
良人
遠靄に浮かぶ筑波嶺秋の音
参道の坂へ人影秋の暮
品の良い長角皿に秋刀魚載る
銚子岬香る醤油に秋刀魚かな
比呂
滴るは海の油か秋刀魚焼く
金木犀存分の香も三日程
無花果の嘯くさまに熟れにけり
犬に嗅がれて大飛びのいぼむしり
取り外し自由の歯あり残り菊
汚くないですか?
聖子
無造作に並べ秋刀魚の光りをり
秋の暮自転車に子を二人乗せ
県庁の影の長々秋の暮
林中の絵画のごとく毒茸
からみたる山芋の蔓秋の暮
山芋、秋の暮で季語が重なってます
昭雄
裏返す秋刀魚の油箸焦がす
秋刀魚焼く飴色に透く火吹き竹
吹く風を散華経とし秋の暮
幸せのまつただなかや初秋刀魚
そんなもんですか?
あの声はきっと妻なり茸山
登美子
焼網の網目繕ひて焼き秋刀魚
新米に恵の雨の湯気上がる
籠の鳥新米炊きたてもらいけり
秋刀魚燃ゆこと知らぬ子の増えて
秋の暮インコはせわしく餌ねだる
一構
秋の暮解けぬパズルをまたはじめ
漁師らの向こうはちまき初秋刀魚
秋めくと閉める窓辺で妻の言ふ
窓枠のまだ温もれる秋の暮
地下足袋の漢ひとりで藁塚を組む
和子
まだ婆と言ひ切れぬ身や秋刀魚焼く
指にきし蜻蛉の目玉よく動き
とんぼをあきつと読ませるほどの意味がない
山道にこぼれし栗を頂きぬ
拾うんでしょ、頂けません
一葉の色の想ひや秋の暮
週一では覚えぬステップ秋の暮
季語が全然働かない、
一間部屋一人寂しく秋刀魚焼く
不景気や膳に小ぶりの秋刀魚のる
多様性味をかみしめ秋刀魚かな
生物多様性会議での議論らしいが、まったく理解不能
季流れ寂しさ募る秋の暮
秋の暮家路を急ぐ子供たち
利孟
伸びゆける先に秋雲新タワー
鵙高音やうやう上がる昨夜の雨
踏切の鐘滲み鳴り霧深し
秋刀魚焼く路地から路地へ風の道
洗ひあげ吊さる軍手秋の暮