3月のもう一言

美代
たまさかに吹かれ桜の二三輪
吹かれは、動きが見えているのかいないのか?
沈丁花ふれ入る路地の火頭窓
ちょっと下町の路地みたいだから、花頭、火灯窓いずれか
初蝶のへらへら越ゆる仁王門
初蝶の頼りなさの表現として可とするか、月並みとするかだが
銀しぼるひとかたまりの翁草
老幹の洞を天とし冬の草
天というには洞は囲いすぎでしょう
昭雄
産みたてか宮に転る寒玉子
宮でしたが、お宮に放し飼いのまで見えないと逆効果です
明闇を分つ石段梅真白
階段の手すりの左右の柱に闇去、明来とありましたね
飴切りの遊び包丁春隣り
まあありあす
蕪村の名残る名刹昼の月
やはり吟行ですから、属目です
赤門の修復なりて梅開く
修復なりては、なんだか?、落慶のとか使えば違うだろう
聖子
老幹を隠して寺の糸桜
ものの芽の土押し上ぐる太さかな
太さが気にはなるのだが、太さが良いんでしょう
老幹の洞にむれ咲き草萌ゆる
草萌というのは芽が出た状態、咲くのはその後です
萌えさうな草餅ひとつ貰いけり
さう」を旧仮名に意識したのに、貰うはそのままは抜かりました
初桜咲ひて影濃き鏡池
咲く、咲け、咲かないというふうに活用するから、ハ行の入る余地はないです
芳子
梵鐘の音色ひろぎて春の風
啓蟄や余白少なき予定表
梅が香やつひ誘はれて入るる門
つい、というのが俳句なんです
不揃ひの形のありて母子餅
母子草が蓬なるほど、不揃いというのは比べての話なので、ありてには違和感
震災の爪痕屋根に鳥帰る
わかるんだけど、爪痕って漠然としすぎるかも
畑打ちの音の消えたる分譲地
畑打が無いという季感は難しい
敬子
午祭家伝の酒の薦被り
家伝の酒って酒屋の売る酒の雰囲気がないんですね、そこで、紹興酒の方に持って行ってみたのですが
啓蟄の篁に差す薄陽かな
杖つきて踏み出す朝黄水仙
蔵町に育ち老舗の蓬餅
猫眠る箱階壇や春隣り
箱階段のことなのか、分かんないね
於した
初蝶や友を忍ぶる話など
川島清子さんが亡くなったという挨拶にて、佳作に格上げ
老桜の猿の腰掛幹に置き
春の夜や停電で知る月明り
たしかにこの震災ではそうだが
原発で咲くを恐るる桜かな
これは川柳に分類すべきでしょう
啓蟄や見舞電話の人印す
見舞い電話受けのリストでも用意してあるようだから、名前を書き込んだというならこうでしょう
良人
遠霞那須連山を遠ざけり
法面にたんぽぽ一輪昼日中
薄紅の桜の芽立ち山の寺
風に跳ね仄とつやめき薔薇芽立つ
言葉が多すぎる
色くすむ大谷石塀風光る
くすむ、光るね、くすんだ大谷石では当たり前かも
利孟
花兆す小首かしげて弁財天
紅梅や天に声吐く柵の鶴
たんぽぽや子と広げたる握り飯
木々芽吹く鉄燈籠の錆びし獏
鶯や台座に銭の阿弥陀佛