第199回 平成25年7月21日
兼題: 夏の夜 浴衣



  利孟
夏の夜の屋台の椅子にビール箱
風分けてくれ相席の白ゆかた
地の縁の明るめばはや御来光
かはほりや尻にざらめのかすていら
真清水の濁りを知らぬ砂沸かす

  ミヨ
☆大鋸屑の嵩をくづして氷室守
△神苑や朱の襞重ね梅雨茸
・濡れ縁に脛を揺らして夏の宵
 川風や浴衣地さらす染日和
 茴香や煎じの染みの古土瓶

  敬子
☆せせらぎの闇へ一途の恋蛍
・夏の夜健ちやん元気と腹話術
・気に入りの柄で三年藍浴衣
・苺ジャム煮上がり夕の星一つ
 蛍袋池畔に視野をひろげたり

  比呂
△月涼しのんののんのと子の呼びて
△鶏も子供も跣日の盛
・かけらるる浴衣なびかせ勝力士
・遠雷や早耳の蟻急ぎ出す
・白蓮に絡みカンダタの蜘蛛の糸

  昭雄
△石一つ据ゑて山葵田水奔る
・肩上げを降ろせばちょうど染め浴衣
・帯締の軋みを解く夏の夜
 門灯を灯し客待つ初浴衣
 透きとほる切子グラスの脚線美

  鴻
△舌垂れて犬は酷暑に耐へにけり
・蛇苺草で繋いで作る数珠
・夕風を部屋に引き入れ夏の夜
 丑の日の土用鰻を煙らせて
 縁側に浴衣姿の若夫婦

  信子
・夏の夜や海を背負うて深海魚
・大まかに生きこれからも藍浴衣
・霧しぐれ見えぬ彼方の佐渡までも
 さくらんぼ食みては次の枝探る
 一生のさまざま未だ湯帷子

  聖子
・白浴衣俄か正座の続かざる
・浴衣着の鶯嬢の票を読む
・旅の宿選ぶ花柄染浴衣
 束髪の白きうなじや藍浴衣
 もののけもいるらし夏の夜のライブ

  一構
・夏の夜の機織る音や蔵の町
・咲きついで咲き登りきり立葵
・晩酌は甕の古酒夏の夜
 山百合の人の会釈や九十九折
 水草の花ひつそりと袋小路

  良人
・夏の夜や囃子太鼓の軽き音
・ビル風に干し物ゆれる夏の夜
 浴衣着てバス停に立つ親子連れ
 宿浴衣サイズは襟の大中小
 宿浴衣揃ひて向かふ露天風呂

  輝子
・夏の夜の寝息健やか水枕
・夏の夜の虫の飛び交ふ街路灯
 雨あがり窓開け放つ夏の夜
 不揃ひの脛の長さや宿浴衣
 古浴衣亀甲柄も色褪せし

  木瓜
・忘れ得ぬ疵持つ我が身藍浴衣
・幽霊に息をかけられ夏の夜
 身を雪ぎ浴衣片手に星仰ぐ
 句と句をば夕立雲と立ち上げむ
 三つうちどれにすべきか夏の宵

  健
・常夜灯人波絶えぬ夏の夜
 スマートフォンに指を遊ばせ夏の夜
 気に入りの帯を文庫に藍浴衣
 朝湯して芸妓の衣紋抜く浴衣
 夏の夜風の如くのスマホかな