6月のもう一言

利孟
街騒を近くに風の網戸かな
風に羽根ひろげ温もり岩根の鵜
夕薄暑立ち呑み酒場の外に椅子
紫陽花や鎌倉古道は川越えて
喫泉を取り合ふ鳩や薄暑光
信子
暮れ残る仏舎利塔や丘薄暑
石段へ鳴らす靴音薄暑かな
通り雨過ぎて風呼ぶ網戸かな
湯上がりの網戸に見やる宵の月
庭先へ寝かせ張り替へ網戸かな
ミヨ
泡盛や阿檀の風の夕心地
竹皮の握り飯買ふ駅薄暑
駅弁発祥の宇都宮のご当地句みたいで良い
降る網戸開閉の無き納戸かな
春蝉や疊上げ置く作業小屋
疊上げるというのは畳敷きの部屋てことで作業小屋とは?
琉金の転覆癖や草にふれ
昭夫
隠沼の小舟の灯る夕薄暑
青網戸二合半酒を酌み交はす
二合半=こなから、二合半酒というとわずかの酒らしいから、酌み交わすほどでは?
主出て来られし薔薇を見てをれば
氏神の鈴の緒太き薄暑かな
薄暑はや日波に紛る浮御堂
轆轤蹴る利き足確か柿の花
比呂
郭公の湖に響くや裏男体山
裏男体山となるとローカルでマニアックすぎる
隣からの者煮る匂ひ夕薄暑
猫去にて膝もてあます花ざくろ
膝が花ザクロを持て余すわけじゃないでしょ
狂ひ飛ぶ虫のぶつかる網戸かな
木瓜
荒波に五月雨叩く二重奏
二重奏なんていっても不協和音だけでしょう
一筋の煙すり抜く青網戸
ビルの街所定めず薄暑光
まあ、あまねくあるものですが、それを所定めずと住所不定みたいには言わない
待ち焦がれ外の暗闇吸ふ網戸
外の暗闇を待ち焦がれる?なんだか分からない
腕かざし汗噴き出づる薄暑かな
季重り
敬子
父の日や袴に残る躾糸
新茶くみ長寿の秘訣話し合ふ
庭仕事はじめし背に薄暑かな
網戸ごし仰ぎて恋ふや夜の星
ままごとの椀に山盛り濃紫陽花
良人
下校児の頬の赤らむ薄暑かな
日の入りて山の端潤む夕薄暑
並木路に歩む人増す薄暑かな
いつとのひかく?
網戸越し遠き落日ながめ居り
風の間に風を求めて網戸開く
聖子
サイホンの静かな一滴薄暑かな
サイホンの一滴で珈琲サイホンにたどり着けるか?
菜を刻む夕日入り来る網戸かな
冷奴崩しぬ怪我のまだ癒えず
湯上がりのほてり灯を消す網戸かな
風に鳴る網戸に午睡覚めにけり
季重り
住み心地庭の緑の薄暑かな
本読みて一息入れし網戸越し
外出に着る物迷う薄暑かな
どう迷うかを言えると良いのですが
草むしりふりしてのぞく網戸越し
痴漢行為か?
旅に出て身にも心も薄暑かな
輝子
網戸より夕餉の匂い人の声
匂い>匂ひ
鳥の声薄暑樹の元誘いけり
モザイクの景色見るるや網戸越し
街薄暑赤信号を避けて行き
薄暑光蔵の茶房のししおどし
多分あったんだろうが、室内てのがちといただけないね
巴人
網戸越し十字の花の白さかな
階や除草奉仕の薄暑かな
竹林や手にも顔にも薬降る
薬降るという季語はもう一寸、抽象的なんじゃないかな
霽れ庭に蔓伸びきほふ薄暑かな
代々神楽の舞人光る薄暑かな
神楽は冬だな
薄暑光林に入りて一休す
一休さんじゃないんだから
網戸から涼風吹き込む新築家
ひねもすを漁網の修理に熱中す
無季、一日中やってるてことは、熱中してるんじゃ無いの?
川干し川底あちこち魚踊る
麦飯を久方ぶりに味はひぬ
単純な事実の記述だけ