第232回 平成28年5月22日
兼題 麦秋 母の日


  利孟
 花苗を選りてさほどの変はり無く
 五月雨や一口ビールのつくランチ
 荒瀬ゆくやうに身を撚り五月鯉
 暗渠へと消える外濠時鳥
 麦の秋天使が減らす樽の火酒

  比呂
★水煙の天女の裳裾風薫る
○聖五月オラシヨにまじる島訛り
・父の日や父似は良しと言はれても
 畦に届く小昼のむすび麦の秋
 大でまり指鳴らし解く催眠術

  昭雄
○九九唱ふ声麦秋の木の校舎
・牛の眸に穂波の燃ゆる麦の秋
・聖五月二列で進む鼓笛隊
 一村を神代に戻す麦の秋
 風くれば光に変はる麦の秋

  ミヨ
・木の芽風林道閉鎖の鎖解く
・松蝉の声より晴れて杣の小屋
・ローマ数字刻む時計や聖五月
 熱気球の行方はいづこ麦の秋
 噴水や子らの歓喜の空くづれ

  信子
・小鳥来る朝に二合の米を研ぎ
・歳時記の我が師の一句窓若葉
・ドクターヘリ音残し発つ聖五月
 息を吐き切つて腹筋麦の秋
 列をなす棒の高低畑五月

  美恵子
・応援の野太き声や麦の秋
・栃の葉の揺れ珈琲の香りけり
・五月雨や利休鼠の巴波川
 五月雨や苔生す径を訪ねけり
 組み体操一糸乱れず麦の秋

  晴子
・石庭の隅の床几に汲む新茶
・庭にまた鳩の棲みつき五月来ぬ
・麦の秋音立て赤きランドセル
 幼な手よあつ五月鯉捕らへるや
 母の日に歳を重ねて旅枕

  良人
・麦秋の畑を囲ひ休耕田
・燧ヶ岳背に池溏に映る夏の空
 重たげに風やり過ごし麦の秋
 雑雑と雨音高き麦の秋
 卯の花に光さんさん馬走る

  健
・川音を辿る家路や五月闇
 窓外に広がる田圃麦の秋
 空青く光の包む麦の秋
 風受けてサイクリングや麦の秋
 小径行くほとりの五月濡らす雨

  木瓜
・麦の秋ゴッホは汗を拭ひ描く
 五月雨然程急ぐな人生路
 酸つぱさや清廉の爪夏蜜柑
 黴失せて何やらひとつ物足らず
 新茶汲む指に馴染みし罅茶碗

  聖子
 麦秋の麦のかおりの車中まで
 灯のいりし藁屋水田に浮き上がる
 立ちこぎを追ひかけてくる夏の雨
 麦秋や旗日の旗のびしよ濡れて
 風光るどこか揺れゐて鳥の声

  敬子
 麦の秋自問自戒の余生かな
 花菜畑行きつもどりつ英会話
 花菖蒲母の遺愛の割烹着
 花うつぎ虚空蔵菩薩頷ける
 聖五月洗礼受けし友傘寿