第242回 平成29年3月26日
兼題 朧 花筏


  利孟  
 路地伝ひ彷徨ふ銀座朧かな  
 引鶴の今朝この先の田よりかな  
 風が組み風に送られ花筏  
 彼岸入り淡き炎に燃ゆ古卒塔婆  
 ハイタッチして受験子と塾講師  

  良人  
★呼び鈴の篭れるひびきおぼろの夜  
★終電の客の消えたる駅朧  
▲夜籠の八溝山を照らすおぼろ月  
 風運ぶ棚田に浮かぶ花いかだ  
 花いかだ里田に浮かべ桜かな  

  ミヨ  
★甘茶寺鈴緒の影のゆれやまず  
▲村一つ沈む堰堤月おぼろ  
▲小流れや日の斑にゆらぐ花筏  
・梅の頃客のもとほる過疎の村  
 暁に聞く谷地田の奥の雉子かな  

  昭雄  
▲吹き晴れて日波に紛る花筏  
・朧かな路地に塩盛る若女将  
 灯を一つ点せば足りぬ朧の夜  
 花筏堰おつるとき上がる声  
 小面の見下ろす笑みや朧の夜  

  信子  
・湯桶伏せ上る仕舞ひ湯朧かな  
・針の手を休め朧の雨戸引く  
・花筏堰越えゆけばちりぢりに  
・なかんづく上州野州の空つ風  
 百年の幹隣り合ふ桜かな  

  比呂  
・水門の赤き大螺子葦の角  
・岩座を咬みし走り根百千鳥  
 弄ぶ空理空論朧の夜  
 あしかびや重き泥の荷朧船  
 花吹雪大河にこぼれちりぢりに  

  敬子  
・麗かに東に開く寺の門  
・大平路辿る山家の朧月  
 雲雀野や競ふ姉妹の三輪車  
 春雨や娘の恋の行方かな  
 娘らの自由の日々や雛祭  

  一構  
・鬼怒川の瀞に寄り合ふ花筏  
・幸不幸一輪挿しの初桜  
 風呂の窓夜風せまりて朧かな  
 明烏図書館上に朧月  
 梅散りて犬と散歩の朧月  

  美恵子  
・花筏のたりのたりと暮るるかな  
・紅娘の水先人や花筏  
 花筏鮒を醤油で〆て煮て  
 花筏コルクで栓の今朝しぼり  
 お開きに贈る花束朧月  

  聖子
・アルバムの友の笑顔や朧の夜
・潮風の誘ふ河口へ花筏
 鐘朧父の墓域に灯の入りて
 井戸端の用水路にも花筏
 見えている山は故郷風朧

  健
・語り合ふ友の来たらず朧月
 せせらぎの音いづくより花明かり
 朧夜の見え隠れたるシルエット
 日もすがらのたりのたりの花筏
 咲く桜散りてもよしの花筏

  青樹
・朧月家並越え来る時の鐘
 水面なる古城に添へし花筏
 花筏揺らし通るや春時雨
 静かにと受験の孫が朧月
 朝練の声校庭に初桜

  木瓜
 天を突く恋猫の声切なくて
 今日だけは神となりきる四月馬鹿
 黒猫の背を逆立てて朧月
 一片を交へてくるり花筏
 水温む手足伸ばせり洗ひ猫