4月のもう一言

利孟
花散るや丹の楼門の銅(あか)の屋根
花散るや勅使参向記念の碑
青楓鯰押さへて要石
春昼の手を振りづめに招き猫
酒蔵の高き屋根裏春灯し
春灯し地名絵解きの無筆地図
信子
花明かり版木の地図の種子島
初蝶の寄りては離れ池の上
茅葺きの深き軒先春の闇
散るさくら鯰宥むる要石
清め砂囲む小幣や花の雲
風薫るさはら舟乗り巡りけり
春光の降り注ぎたる大鳥居
新緑のこぼれ碑さす朱門かな
葉桜や表参道迎へたり
日本地図星空調べ象限儀
あやの
よさこいの髪に花びら二三片
米醤油運びし川の柳かな
初蝶や千年杉の御神木
春うららジャージャー橋の水の音
良人
参道の木立に交じり桜影
川舟の浮かぶ水面や春うらら
風薫る土蔵の町に赤レンガ
春暑し伊能忠敬記念像
葉桜を見下ろす香取の大鳥居
木瓜
香取神宮朱き鳥居や鳥の恋
葉桜や忠敬遺す日本地図
石塔の間に咲く一人静かかな
花の昼句を読む時間足りなくて
ミヨ
坂がちの森の社やさくら散る
古地図の堰越え余多花の頃
測量誌の和綴じの確と遅ざくら
身ぎれいな女船頭花は実に
菜の花の白き蝶吐く常陸郷
昭雄
初燕上総は空の広き国
風薫る見上げて修す象限儀
笠間焼褒めて称えて蜆汁
燕くる頃から仰ぐ安房の空
薫風や走り根囲む要石
聖子
風薫るかやぶきの門消火小屋
山すみれ蕾は息をこらへしか
桜舞ひふと足止めて神宮坂
神宮の坂の途中に一輪草
葉桜や石段奥の要石
青樹
風光る縄跳びの子の髪揺れて
花粉症涙目につい忖度し
チョコ贈り気を持たせてか四月馬鹿
花筵子等のごっこの場ともなり
ポニーテール影踏みの子に春の風
敬子
中宮にしぼり模様の芝ざくら
桜草大平山麓の近く住み
散策に歌声ひびく黄水仙
半生の夢と希望の雪柳
卆寿記の奇遇の友やチューリップ
比呂
御祈祷所の車もみじまあく付け
花吹雪安産神の末社かな
宝物殿大き錠前野のすみれ
芽柳やつんのめるやう歩み初め
海抜百三十尺の香取神宮燕来る
美恵子
若楓朱塗りの灯籠凛と建つ
大門にむずと大臣虎に座す
忠敬橋黒き蕎麦の香青柳
豪商の小江戸瓦や風ひかる
勝ち守り鎮守の屋根の厚きこと