5月のもう一言

利孟
若葉して木暗き宮の栃並木
単衣出す虫除けの香を風に抜き
風抜けて白大島の長羽織
石楠花の花追ひ辿り天下の嶮
石楠花や肉抜きカレーの小屋の昼
敬子
大空の光をつれて夏燕
鯉のぼり女船頭身を振りて
若葉風勝手口より孫と猫
面白いね
礼状の文字すらすらと睡蓮に
どうやら、お得意の絵手紙の話のようだが分からないし
被災地の復興パンジー千の鉢
昭雄
単衣着て少女は歯切れよき返事
単衣断つ尺に昭和の日付かな
単衣も袷も裁つのに区別はないような気がする、薄物となれば別だが
石楠花や堂に居並ぶ六地蔵
紫の単衣築百年のにぢり口
石楠花園苔むす句碑や雲巌寺
比呂
菜の花や左千夫の墓は川向ふ
白地着し息子の声の祖父似かな
レンタルビデオの二泊三日走り梅雨
石楠花や雨後も女滝の細きまま
尺蠖の何を尺取る半夏生
節季にせよ、植物にせよ半夏生は季語、尺蠖も季語
信子
石楠花や二峰雲間に筑波山
水さやぐ入日明かりの植田どち
なんも植田を複数形にしなくたって、田圃は連なり広がってるのが基本です
をちこちの声菜園に豆の花
沖縄は梅雨入る気配昼の雨
単衣着て帰り路急ぐ雨上り
ミヨ
石楠花や日月窓の石燈籠
梅雨近し傾ぐ稲荷の楔打つ
代掻くや噴煙なびく茶臼岳
杓伏す水屋かがよふ袖単衣
筍の伸びきる空や藪奏づ
上中と良かったんだけど
聖子
単衣着て下駄音響く京の街
単衣着て外股歩き手提げふり
白石楠花窓清掃の命綱
白石楠花と窓清掃のはちと遠いでしょう
空青き山並み遠し白石楠花
ハーモニカ土手のたんぽぽ綿毛ふく
綿毛を吹くのとハーモニカを吹くのとどっちなんだい?
木瓜
黄昏に玉蜀黍の花ゆれる
単衣着る葉擦れの音や乾き跳ぶ
石楠花の葉擦れの音の軽きかな
なんだ、ここにも葉擦れのかるいおとがある、発想に柔軟性が必要だ
練りに練り器晩成夏燃ゆる
核持ちて核を持つなと言ふ溽暑
面白いけど、すぎなみき風ではないわね
身軽なり足取り軽く単衣かな
風を飲み空にはばたく鯉幟
はばたくは普通ではないけどまあ有りかな
石楠花の異彩を放つ薄紅色
五月雨や川面の緑濃く染める
石楠花の雫こぼれし一葉かな
良人
単衣着て上る石段風わたる
僧の着るひとえのかえす日の光
坊さんの衣は年中ひとえみたいにみえるけど、よく分からない
石楠花の群落続く白根山道
わざわざシラネと読ませて道までくっつけなくても
ひそやかに石楠花咲けりビルの影
ビルの影が差していたんだ、ビル陰とばかり思っていたが
単衣着て杖手に辿る町表
アキレス腱切って杖ついてたという個人的事情は読み手には分からないか、ただの老人が町をあるいてるってこうけいです
美恵子
芍薬や雨きらきらと蓄へて
躙口単衣の裾のつっと入り
芍薬の帯締め直す舞台裏
帯に描いた芍薬は季語として働かせるのは難しいですね
銀の空母の単衣の色褪せて
新葉や髪かき上げて飲むコーヒー
シンヨウはいただけない
青樹
外来種石楠花燃えるごとく咲き
三句切れね、外来のとか本質的でない言葉で飾っても、石楠花の燃える色が引き立つわけではない、ごとくは俳句の表現の中心だから、ごとくとせずに言い切れるだけの追求が必要なのです
萌黄色単衣着纏う山清し
苦し紛れに飛んでもない山にまで助けを求めず、どうやって素材をたっぷりと詠うかをかんがえること
山肌に石楠花群れて花咲けり
嫁ぐ子へ母は夜なべの単衣縫う
夜鍋って冬の季語なんですね
単衣着て吾を待ち居る人愛し
なんたる演歌
澄水
浴衣縫う母の姿を夢に見る
何かを夢に見るなんて話は面白くもない、その中身だけを語れば事実として話が出来上がる
通勤の傍らに咲く石楠花が
風鈴が揺れエアコンを止めてみる
遠きかな単衣の下の白き肌
なんだかねえ?
石楠花の側駆け抜ける雨が追ふ
自分がなのか、雨なのかなど構文が分からない