6月のもう一言

利孟
五月闇の宙より鐘の聖母堂
梅雨晴間上下に窓の開く客車
後始末の主待つ犬夾竹桃
花南天散りては蟻の道塞ぐ
梅漬けて梅の香の湧く梅の水
昭雄
梅雨滂沱城の心礎に人柱
その奥に甲冑の立つ梅雨館
青嵐天空の琴掻き鳴らし
ですか
操車場鉄鎖の匂ふ梅雨晴間
梅香る指打つメール走りけり
比呂
ステンドグラスに若きイエスや花石榴
見えぬ香を放ちて高し朴の花
透明の置き傘献ず走り梅雨
釣書の麗句しかじか苔の庭
苔は季語にはならないでしょう
松蝉や坂下りて付く寂れ宿
ミヨ
列なして一夜に育つ梅雨茸
菖蒲田や名も無き橋の大かりき
ユッカ蘭咲ひて波音すぐうしろ
嫁入り舟南風の押し出す利根の口
古蔵の普請粗方梅を干す
信子
青梅雨や海を四方に美し国
長屋門構へ代代夜干し梅
ビル街の働く灯り走り梅雨
神領の梅雨寒の舌垂らしをり
はい、舌見せて下さい」「べえー」なんでしょうけど??
確と嬰咥へてパンダ梅雨の星
美恵子
父の日や我にかたみの萬年筆
半夏生熟れし香りも漬け込みて
女梅雨ショパンの打つごと降り続く
木下闇背に手を添へて見送りて
撮り貯めた写真に添え書き梅雨篭
木瓜
梅干しの日の丸光るお弁当
炎昼や野望膨らむドラム缶
鼻の上居座るメガネ梅雨長し
独り食む冷やし中華や冷え立ちぬ
片かげりほつとひと息冷茶注ぐ
澄水
老いた手が梅コロコロと返したり
外灯の下紫陽花も重くたれ
サッシ開け梅干す縁に風を入れ 
サッシ=枠
川風に揺れる青梅たわわなる
校庭の蕾脹らむ梅雨葵
聖子
傘振り回し下校の子梅雨晴間
梅雨晴間込むしどこより出てきたる
虫出づると紛らわしいが
旨みます予感夜干しのござの梅
母自慢の秘伝梅干し分け貰ふ
孫自慢、娘自慢と使うからお母さんが自慢なの?、秘伝と自慢はたぶん被ります
梅雨晴れの酸味程よきドレッシング
おにぎりに梅干し入りて弁当かな
梅雨入りのたたく傘の音長かりし
懐かしき雨上がり後の蛍狩り
懐かしきは全く要らない措辞です
紫陽花や雨の坂道七変化
紫陽花を七変化ともいいますから
梅もみの笑顔はじける家族かな
良人
黒光りする広縁に梅並ぶ
街路樹の上枝延び切るもどり梅雨
伸び切るとそこで成長は終わり、ぐんぐん伸び続けてるて感じでは?
走り梅雨鬼怒川の土提埋む花畑
花と言えば桜、お花畑は高山植物群だが
梅を干す農家の庭を香の包む
田の草の勢ひ増せり走り梅雨
敬子
道問はれ杖で書く地図小判草
麦秋や裾なだらかに大平山
もてなしにそえ梅入りのにぎり飯
リハビリや杖と目深の夏帽子
孫俳句と逆のリハビリ俳句という分野も生まれますか
亡き夫に肩たたかれて昼寝覚
一構
トマト切る包丁研いで心地よし
努力賞!
立山や日照雨輝く白き虹
額の花己が邪念と向き合ひし
早朝に歩く初老の夏衣
雹見舞一歩重たくなってきし
青樹
工事灯点滅眩し梅雨の闇
梅干して日陰は主婦の社交場
梅を干し日照雨に媼呼びにけり
梅干しや種を奥歯で割りしころ
寝て起きてまた寝て起きて梅雨となり