3月のもう一言

利孟
香を散らす仏師の鑿や冴え返る
木の芽山高菜でくるむ握り飯
春隣り鍋を揺らして自在鉤
駐在所裏に干し物麦青む
襲ね着て裾乱れ無き女雛かな
青樹
芽柳の揺れて少女のお下げ髪
芽柳が揺れたからお下げがどうだっていうの?関係ないのです、取り合わせるにはどうするかです
晦日闇犬の遠吠え冴え返る
冴返る今朝は小耳が痛いほど
タラの芽を摘むに思案の昨日今日
そうだとは思いますけど
春の雪話題の多い五輪祭
オリンピックの評論じゃ無いのだから
昭雄
冴返る桧山杉山斧木霊
中下のリフレインの音律は良いのだが、寸が詰まって苦しい
木の芽和口伝のレシピ祖母ゆずり
山椒の芽パンと一打母卆寿
卆寿とどう響くかな?
露天湯に硫気ほのかや木々芽吹く
このやの切れは因果関係があるみたいな雰囲気がある
冴返る正論吐きし漢の背
清泉
灯の消えた仮設住宅冴え返えり
木の芽ふく下にやさしき六地蔵
下には不要、お地蔵さんがやさしいのは当たり前過ぎ
三日月は刀身のごと冴え返えり
あんまりに当たり前過ぎるとは思いませんか
瓦礫紗利祈の丘に木の芽ふく
ママ友と子らを見つめる木の芽かな
ママ友が俳句で使えるほどに成熟した日本語かが一つ、木の芽の擬人化がどうかがふたつ目
巴人
冴え返る野辺の送りの白袴
あたり鉢孫の手伝ふ木の芽味噌
冴返り並ぶ喪服のたたみ皺
菩提寺の朱き山門木の芽張る
なき笑ふ御社つつむ名の木の芽
比呂
冴え返る警邏の腰の鍵鳴れり
一切経納めし蔵や春の闇
厄介な話は反らし木の芽合へ
手つかずの積ん読古ぶ春の蠅
うかうかと水際選び野焼きの火
聖子
木の芽風浴びて歩むや牧の牛
防風林の芽吹きの中の生家かな
裏山の芽木の総立ち見渡せる
大吉のみくじ引き当つ木の芽風
当つは古語として終止形、連体形になり終止形では句として成り立たない、連体形だとお神籤を引いているのが木の芽風になってしまいます
冴え返るヒートテックを手放せず
そういうこともありましょうが、あまり詩的では無いですね
敬子
旧姓で聲をかけ合ひ鮟鱇鍋
お互い旧姓でとなると女子会?、鮟鱇鍋はやや?
校庭に大きな時計木の芽立つ
連翹や祖父の詩吟の懐かしく
冴え返る青々染まる遠き嶺
まあ、冴え返ると青々はずれてるでしょう
コンサート出でて黄梅の花影に
分かりかねます
ミヨ
木造船置き去りの浜冴返る
薬膳の小鉢の一つ木の芽和
これは「キノメ」でしょうが
隠沼や蛙合戦淵の闇
沼か淵か分からないね、
鶴嘴や大谷石窟冴返る
御殿平茫々たりや鐘おぼろ
信子
膝並べ点前習ふ子桃の花
桃の花がよかったね
本閉ぢて見遣る窓辺や木の芽雨
本を閉じて窓の外を眺めるという行為に詩情を感じるかどうかですが、私は駄目です
寒戻る向ひ家に点く一人の灯
道普請ホワイトデーの街明り
冴返る額になんど思案の掌
美恵子
冴返える掃き清め立つ長屋門
風溜まる一高の門冴え返える
木の芽晴今か今かと畦通い
子の歌を練り込み作る蕨餅
卒業や袴の裾の軽やかに
良人
梅咲きて近く遠くに鳥の声
梅咲きて近く遠くに鳥の声
山の端のひかり輝き冴返る
山寺の陰る石段冴返る
人目引く宵の明星冴返る
目立つから明星っていうんですよね
堤吹く颪の行方冴返る
木瓜
欠伸して影流す猫遅日かな
影流すて独特だけど理解できなければそれは言葉では無い
冴え返る日光街道杉並木
良い雰囲気の句だが、ちょっと物足りない
雑木の芽皆一斉にさやぐ時
花冷えや友の入院長廊下
友の入院に個人的には意味がありましょうが、読者にはどうでも良いこと、病院の廊下にどんな発見があったかの方が俳句的にはずっと面白い
獏なりや少年の夢春の雲
この場合の夢は寝ていて見るものじゃ無いから獏は出番が無い