3月のもう一言

利孟
花筵底の汚れて新の足袋
春の泥祖父の編みたる藁草履
萱屋根の棟の高さに花辛夷
畦道を行きその奥の老桜
苗札の失せものの芽に戸惑へり
ミヨ
開拓の痩せ地潤す茎立菜
読み書きの縁遠き日や孔子祭
ボケますぞ
しだれ桜の根のがらんだう刻の影
測量や巻尺からむ春の泥
今時レーザー測距ですけど
雑貨屋の並ぶ木桶や燕来る
信子
春の泥つけ腕白の一張羅
賽銭の転ぶ一音百千鳥
一百千を狙ったのだろうが
春の宵一握ほどの犬の飯(まま)
いまどきご飯に味噌汁掛けてみたいで
胸に抱く犬の甘噛み夕桜
海光を散らす岩波木の芽晴
良人
若櫻新堤防に花咲かす
咲き満ちて丘埋め尽くす桜かな
谷あいを三椏の花白く染め
春泥を踏みていたりぬ無人駅
ようやっと散歩で看取る初桜
昭雄
春泥を来て下野の戊辰の碑
滝桜大河流るる音したり
桜蘂尊徳像の薪にも
尊コ像ていうと成人の座像でしょう
立句かくあれと見上ぐる桜守
良い覚悟ではあるが、連句をするかい?
夕闇の畦塗り叩く春の泥
畦を塗る、春の泥それぞれ季語です
雅枝
初恋は桜の土手のかくれんぼ
春泥のトラック乗せ来紀州デコポン
満開の桜を慕う空の青
春泥に残る靴跡我がアリバイ
桜咲く宇大の門に人集う
宇大て、多分栃木県人以外には分からない
聖子
春泥や背中も汚し遠足児
一くさり弁当自慢花見茣蓙
歯科治療窓辺に桜散りそめて
歯の治療受けながら窓を見たり出来ないだろう
朝まだき小暗き土間や春の泥
三句切れ、朝まだき=小暗い
県庁の社会見学つくしんぼ
いくら田舎の県でも県庁にツクシを見にはいかなかろう
巴塵
園児らの尻に跡おく春の泥
春泥や白足袋よごす墓参かな
や、かなは同時には使いません
あらたうと水照りまとふ山桜
感嘆詞でごまかすのは流行りません
犬あそぶ桜下釣人波しずか
どんな地形でしょう?
枯百合の香ひかすかに春の泥
なんと読む?
英郷
春浅くせなで聴き入る夜半の雨
ひと嵐孝子桜は散りぬるか
ひと嵐、ひと風、言葉は広く探しましょう
春泥を避けて通るもすっ撥ねる
身をかわし反らす春泥眩しかり
反らすは反っくり返るときに使います
ひと風に枯れ杉葉落ち初音かな
??
木瓜
畑打つや幼虫!颯(さつ)と打ち逸(そ)らす
強烈な反射神経
木瓜咲くや紅に真白に安閑と
安閑はなかろう
夜桜やしんと染み入る街路灯
春泥やピンクリボンのハイヒール
ピンクリボンは乳がん撲滅運動
ドア叩く「待つてゐたわ」とサイネリア
花だとは知ってますが、美女の名前かと思いますよ
比呂
たつぷりと生きて蓬けり葱坊主
千年の花黒ずみて枝垂れけり
薄墨桜っていうけど、黒ずんではいけないでしょう
足舐めている赤ん坊小六月
小六月は初冬ですけど
計る嬰の針の大揺れ初桜
ドナルド・キーン大和に死せり春の泥
前書きをあれこれ工夫して
俊一
春泥や踏み石とびとび出勤す
通勤ではなかろう
初桜寝ても覚めても五七五
俳句のことを素材にしない!、一度だけ許して入選
待ちかねし桜前線すぐそこに
散る桜かくもありたし我もまた
出来合の感覚だね
散る桜いさぎよきかな散る美学
そういうものという、固定概念を引いても駄目
敬子
巡拝の四國霊場若葉風
しんみりと介護の会話チューリップ
渓谷の宿にいやさる夕桜
天空へ少女の祈り早春歌
心身のおだやか卆寿紅桜