10月のもう一言

利孟
水漬きたる原に向かひて芦刈女
髪の無き頭に帽子案山子
貧ゆゑの棚田の今や崩れ秋
車止め脇に入り口紅葉谷
人来れば驚くそぶり稲雀
比呂
岩なぞる音無き女滝秋の蝶
鵙の贄枝に小魚のきらきらす
到来の茸に匂ふ山の土
高鳴きの鵙の来てをり解斎殿
ゲサイデンなんて字見なきゃ分かるわけない
湖に映る尖塔紅葉冷え
絵が見えてこない
ミヨ
萱刈るや村に残りし煉瓦窯
勤行やひたに唱へり堂の冷ゆ
いろは坂紅葉かつ散る女人堂
女人堂が効いてるね、紅葉と鬼女伝説なんてのもちらっと浮かんだり
獣道消え方しじに草紅葉
戸隠や乞ふ新蕎麦のぼつち盛り
良人
蘆を刈る人影遠く遊水池
谷深き一軒宿の紅葉宿
単線の駅に寄り添う紅葉寺
猊鼻渓船頭唄う観楓船
芦を刈る鎌音運ぶ原の風
信子
豊年へビル清掃の命綱
豊年はちと離れすぎでしょう
秋の空廻る木馬が子に跳ねて
束の列見遣りて葦苅女の昼餉
迫り出して沼の紅葉の水鏡
葦苅の音へ疎水の水の音
英郷
芦刈りの残れる束に風さわる
芦刈の地に広ごれる日本晴れ
嵐去りポプラ並木は黄葉かな
季重なりにする訳にはいかんでしょう
登りつつ見上げる先にあら紅葉
あら!紅葉だわ!ってこと?
昨日今日隣の柿は伐られけり
あらあらそれは残念
雅枝
無尽蔵散り来る落ち葉ひとり掃く
夫の目の細むいなごの甘辛煮
枯れ芦の河原に過ぎし子等の声
熟柿下のバクダン避けて駐車せり
まあそうでしょうけど
鬼皮を剥きて今宵の栗ごはん
そうしなきゃ栗ご飯にはなりますまい
昭雄
芦刈夫大鎌振りて舟を出し
深呼吸見上げる指呼の柿紅葉
落葉焚く巫女の朱袴遠会釈
遠会釈ってとってつけた感じだな
陸奥の地蔵の御手柿熟るる
ななかまど振り向けば湖きららなす
なぜ振り向く?
木瓜
色変へぬ松皇室御一家式衣装
そういうかはともかくとして
山葡萄ほほ膨らます少年の
しんみりと会津諸白秋深し
酒ね、良きにつけ悪しきにつけ飲みますわね
血管の映えててのひら夕紅葉
蘆刈のいまや天然記念物
無形天然記念物ですか?
美恵子
二つ三つ紅葉散る縁野点傘
縁は縁台?
紅葉狩り一葉ごとの色有りて
まあ、努力は認めます
秋澄める一の曇りなき高御座
仰ぎ見る紅葉落ちてもなお紅き
なるほど
光差し紅葉回廊錦かな
紅葉は錦桜は雲と喩えますから
敬子
秋海棠乳児の様なおちよぼ口
秋海棠がおちょぼ口なの?
秋暑し長寿平安屋形船
リハビリに励む一歩や秋の蝉
かろうじて生き残ってということ?
あれ思ひこれを思ひて萩の群
あらし去り世界に鳴らせ天の鐘