11月のもう一言

利孟
厚さ焼き加減細々薬喰ひ
ステーキも現代の薬喰いかと
時雨るや古りし煉瓦の美術館
晴朗の海の高浪冬将軍
頬被りごつき指たてかむ手鼻
小春かな背を屈めて緋の衣
比呂
冬木立希典旧居二間程
禰宜掛ける山の閂初しぐれ
閉山式を見てるとこうなるのでしょうが
冬桜太子の産屋てふ藁屋
産土の竜虎泳ぐや秋出水
磯菊の群れ咲く崖に波しぶき
敬子
無人駅の無人売店冬初め
坂道を辿る時雨の奥の院
山裾の旧家の大樹柚子光る
栗五つ拾ひて試歩の足軽く
気に入りの紅茶を入れて鵙日和
気に入りのといわれてはそうですかでしかない
ミヨ
尼寺へ登る索道冬に入る
しぐるるや杉の秀尖る鯖街道
時雨と鯖街道は良い取り合わせ
朝勤行暗のつきゆく堂冷ゆる
目耳口塞ぐ三猿初しぐれ
寒々しさが面白いね
奉行所跡礎石もろとも冬将軍
良人
那須山を覆う黒雲冬将軍
改札の列は走らず小夜時雨
路地裏を歩く子猫に時雨くる
子猫は春ですから季違いです
しぐるるや野路端にたつ地蔵尊
校庭に小さな叫び初時雨
雨だ!って駆け出したりだが、雪やら霰ならわかるけど
信子
曳く犬に時折曳かれ草紅葉
豪雨禍の記憶波間に川の冬
一碗の湯気立つ飯(まま)や初しぐれ
一碗が要るのか?
耳元へ峡の川音薄紅葉
雨後の日の彩る木々や冬隣
美恵子
懐手解いて角指す冬将軍
将棋と冬将軍の取り合わせは面白い
捨てられしブリキのおもちゃ初時雨
小夜しぐれ閉店間近のレジ二人
客が二人なのか、手持ちぶさたの二人のレジ係か?
初時雨旅の手帖を開き居り
旅の手帖って何なのか?
冬の暮回答期限のメール打つ
なにかぼんやりした話しで・・
木瓜
髭たてて闇空仰ぐ冬将軍
ちゃんちゃんこするりとはまり麗子像
絵の中のちゃんちゃんこは季語としてあまい
しぐるるや生きぬくリズム老いてなほ
いとまなし十一月のやり残し
街角の人影に揺る冬紅葉
雅枝
初しぐれ露地から露地へいそぐ猫
抗いて朱のルージュさす夕紅葉
年だと言われても若作りて
冬紅葉山は年増の裾模様
紅葉はお年頃で、冬紅葉だから年増ってことね
着古せし手編セーター身の一部
風呂温度ふた目盛上ぐ冬将軍
まんまですね
昭雄
旅好きの終の旅立ち冬将軍
挨拶句としてはそれなりに
神の旅人には読めぬバーコード
杜氏見あげる庭先の残り柚子
七七五の破調、杜氏がなにやら唐突なのです
冬将軍来たれと村は釘を打ち
村が釘を打つわけない、冬支度の様子なのだろうが
初時雨はじめ落ち葉に音が来る
狙いすぎかな
英郷
からり晴れ男体山に冬将軍
百舌鳥聴こえフレイルきざす脚運び
あかね雲袖なし羽織るほど寒むさ
説明的だな
月白く三温四寒に柿たわわ
月白し、三寒四温、柿たわわそれぞれ典型的季語の表現で、季語の羅列にしかなっていない
時雨どき首里城テレビに燃え盛る
火事と時雨はいくらなんでも合わない上に、テレビは詠む対象ではないでしょう