第280回 令和2年5月24日
兼題 葉桜 立夏

 利孟
 紅の珠解き芍薬の金の蕊
 代抜きの蕎麦に昼酒立夏かな
 吹く舌に甘き苦みの麦の笛
 葉桜の陰抜けてゆく音楽堂
 風に揺れ薄ることなき牡丹の香

 比呂
☆葉桜や丸一筆のの老師の書
〇桜しべ大和歌記す古城の碑
〇箱根細工のりろりろ開き夏立てり
・春蝉や坂下り着く湯治宿
 独活室の地につき立てて温度計

 ミヨ
〇休店の貼り紙しわぶ夏の入
・梅干すや母の使ひし笊の染み
・足場伸び塔の伸びゆき春霞
 礼されて見紛ふ日々の風知草
 葉桜の幹がらんだう風さはぐ

 良人
〇里山の木々の色増す夏来る
・日の光眩しさ増して夏来る
・長堤の葉桜並木蔭深し
 葉桜となり訪ふ人の少なかり
 干し物に白さの目立つ夏来る

 昭雄
〇立夏かな納屋の扉の農事暦
・路地裏に子の声の発つ立夏かな
・葉桜や白河郷へ渡る橋
 執念の男の桜一目千
 葉桜やここに関所のありしとか

 美恵子
〇枝ぶりを眺め剪る松立夏かな
・オンライン旅行はセブへ立夏かな
 葉桜や田槌畑土黒ぐろと
 葉桜やランドセル背負ふ影なくて
 春の漁終はりて漁夫のジンギスカン

 信子
・野良をゆく立夏の上り下り線
・夕若葉さわがせ大気不安定
・週三日通ふ透析夏立てり
 葉桜や薄切り肉に塩レモン
 薄れゆく記憶は運命花は葉に

 敬子
・冷凍庫すつきりさせて弥生尽
・菜の花や色とりどりのランドセル
 遊覧船ぷたりぷつたり五月波
 しもつかれ母のいつもの割烹着
 花言葉いくつも口に薔薇を切る

 木瓜
・そよ風に葉桜なびく散歩道
・葉桜や農業試験場の道
 父の日や老母黙して台所
 紫蘭咲くほつたらかしの庭隅に
 居場所なしコロナ悶えん熱砂とぶ

 英郷
・渓奥の桜巨木の花は葉に
 葉桜は渓の向かうにそよぎけり
 葉桜は青空仰ぎ恥ずかしげ
 夏立ちて水漲ぎ映える田ん圃かな
 公園に人の疎らな立夏なり