第313回 卯月句会
令和5年4月15日 書面句会

兼題 野焼き 春の夢 蘆の角 蚕 


宗匠邸多聞庵の熊谷草(へんみともこ贈:20年経ちます)



  利孟  
 群れ咲きて一人静の白競ふ  
 牧わたる風をまとひて桜草  
 六年生総出のお役入学式  
 蘆の角際に網入れ漁り舟  
 保育器のまだ開かぬ眼の春の夢  
 松明を手に手に散りて野焼き勢子  
 皇后の御手汚せる蚕飼ひかな  

  比呂  
☆熊谷草低き丘なり父祖の墓所  
○退屈は知らず緋めだか山の蟻  
○雄鶏の駆けるを追ひて春疾風  
・ヤコブの梯子登れば父母に春の夢  
・またあちら椿ぽとぽと風遊ぶ  
・煤浮かぶ水に芽ぐみて蘆の角  
 春雨や曇りガラスを拭きあげて  

  信子  
○食み足りて養蚕部屋の薄明かり  
○胸に手を置くまま覚めて春の夢  
・筍の土の香りの重さ買ふ  
・鉄橋を渡る川風蘆の角  
・ショーの間を継ぐピエロや宵の春  
・春の夢会ひたき人が会ひに来て  
 大いなる野火奔走のほしいまま  

  ミヨ  
○鍬音に惑ふ蜥蜴の尻青し  
○朱塗り橋渡れば寺領かんこ鳥  
・杉並木に花粉まみれの道祖神  
・藤椅子の背もたれ倒れ忘我かな  
 賽銭もコインとなりしご開帳  
 轆轤蹴る足の裏より春きざす  

  美恵子  
○山の茶屋遠く野焼きの煙りたつ  
○目覚ましを止めてさらなる春の夢  
・谷中湖やどこまでもなほ蘆の角  
・花の堰六村の畑潤して  
 西陵の家蚕真白く縮れ羽根  

  英郷  
○渡良瀬の雲を焦がせる野焼かな  
・さざ波にその身をあづけ蘆の角  
・琴の音や孝子桜の灯されて  
・青蚕浄土を語る母ははや  
・陽炎や見るもののみな揺れてをり  
・やはらかき雨にうたれて赤八汐  
 ウクライナの野は灰塵と化しあはれ  
 患者看る間の転た寝春の夢