平成18年4吉日
事業主・労働者各位
社会保険労務士 森 芳樹
電話0586-69-6236
                      
【高年齢労働者の年金受給・高年齢雇用継続給付受給のための雇用管理について】
(一部バァージョンアップ)
 
1、満60歳から老齢厚生年金を有利に受給する方法について その1
【老齢厚生年金満額受給要件その1】
 一言で言えば、老齢厚生年金・基礎年金を一部繰り上げ請求することです。老齢厚生年金の受給 方法には、通常受給、一部繰り上げ受給、全部繰り上げ受給の3つの方法があります。年金受給者 の生活ライフに合わせ選択することになるのですが、筆者が実務処理をした中では、年金の一部繰り上げ受給という方法が、60歳から年金生活する人にとって最も有利な方法であると判断しています。  例えば、昭和20年12月生まれの男性で加給年金対象者なし、厚生年金被保険者期間のうち総報 酬制施行前期間400月で総報酬制導入前の平均標準報酬月額293千円、総報酬制導入後の期間28月、 総報酬制導入後の平均標準報酬月額364千円の年金受給権者の場合、
 支給される年金額は通常受給の場合には、60歳から969千円で63歳以降からは1700千円となります。この際一部繰 り上げ請求をしますと、満60歳の翌月からずっと1560千円が支給されます。そして、通常受給と一部繰り上げ受給の累積額が同じになるのは75歳頃というわけです。 全部繰り上げ受給した 場合には、75歳時点での累積額は、通常受給者、一部繰り上げ受給者よりも少ないという結果が出ます。
 日本人男性の平均寿命が77歳くらいですので、年金受給者自身の健康度と照らし合わせ 判断することです。ただし、一部繰り上げ請求をしますと、以後通常受給への変更はできない、障害年金の請求ができなくなるなど制約もありますので、自身の健康状態等をよく検討し対処する必要があります。 60歳以降も勤務し、厚生年金に加入し在職老齢厚生年金を受給する場合には、年金の支給停止のない自身の給与水準を知っていると自己に有利な判断が可能となります。
 年金の支給停止額の計算において、受けとる年金のうち報酬比例部分の年金月額と会社から受けとる毎月の給与金額の合計額が、60歳から65歳未満なら28万円以下、65歳以上70歳未満の場合には、48万円以下の場合には年金の停止はありません。ここは法律が改正されています。70歳以上の場合には収入・所得がどれほどあろうが年金の支給停止は一切ありません。
 年金の支給停止額の計算において、受給年金額のうち報酬比例部分の年金以外の定額部分の年金、基礎年金、加給年金は停止額計算から除外します。ただし、会社から受けとる賞与 については、賞与の支払いのあった月から1年間は、12等分した金額を毎月の給与に加算して判 断することになります。満60歳直前の賞与額が多額の場合で、60歳以降も引き続き勤務し、厚生年金に加入する場合には、年金額の支給停止問題が負担になることがあります。こうした年金受給者は、次項目の「その2」を参考にしてください。
 会社を定年により退職した場合でも、賞与については、賞与支給日から1年間は影響がありますので前会社で受けとった賞与額を年金停止額の計算に算入しなければなりませんので注意が必要です。 一部繰り上げ請求については、社会保険庁の電 話による年金相談または所轄の社会保険事務所の年金相談コーナーで相談は行っていますので利用 して下さい。
  年金月額(受給年金額の内報酬比例部分の年金のみ含める。定額部分、基礎年金、加給年金などは除いて計算する。基金から受けとる年金のうち代行部分は含めて計算する。基金から支給される+α分は含めない。賞与については、直前1年受給分を12等分し年金月額に加算する。)と給与月額(給与は常勤会社から受けとる分のみ含める。非常勤会社から受けとる給与は含めない)の合計額が28万円以下の場合には、年金額の停止は一切ありません。非常勤勤務で受けとる給与、遺族基礎厚生年金、公務員期間のある人の受け取る退職年金、年金基金から受けとる基金年金のうち上積み部分、簡易保険から受けとる年金、損保会社から受けとる年金などは年金支給停止額の計算対象には含めません。
 平成17年4月1日からは、年金法改定により、60才以上65才未満の者については、年金月額 (受給する年金のうち報酬比例部分のみ停止額計算に算入する。基金加入者については基金に加入していなかったものとして計算する。)と給与月額を加算した金額が28万円以下の場合には年金の支給停止はなくなりました。また、65才以上70才未満の者についても年金月額(受給する年金のうち報酬比例部分のみ停止額計算に算入する。基金加入者については基金に加入していなかったものとして計算する。)と給与月額の合計が48万円以下の場合には、支払年金額の停止はありません。
この場合の給与形態は、時給、日給、日給月給、完全月給いずれでも年金受給に問題は生じません。
 
  ※嘱託労働契約には、フルタイマー制とパート制の2種類があります。
  ※通常の労働者の勤務時間の3/4未満とは、一般労働者の実労働時間が8時間の場合には、6   時間未満で実務的には5時間30分程度です。
 
2、満60歳から老齢厚生年金を有利に受給する方法について その2 
【年金満額受給条件その2】
 (ポイント 60才以降は厚生年金保険に加入せずに、年金を全額受給する)
満60歳(ただし、被保険者期間の短い者が満60才から受給できる老齢厚生年金は、報酬比例部分の年金のみで、定額部分は生年月日に応じ受給開始年齢が遅くなっています)から老齢厚生年金を全額受給することを希望する者は、通常の労働者の勤務時間の3/4未満の労働時間【一般労働者の休憩時間を除いた実労働時間が8時間の場合は、実労働6時間未満で実務的には5時間30分程度。一般労働者の実労働時間が7時間の場合は、実労働5時間15分未満で実務的には5時間程度。実労働時間とは拘束時間から休憩時間を除いた労働時間】で勤務し、給与は時給で受けとることが絶対的要件です。通常の労働者の3/4以上の時間勤務をしますと健康保険・厚生年金(社会保険)保険への加入が義務づけられます。社保加入は任意加入ではなく強制加入が原則であり、当局がその事実を認識した場合、当局は社保加入を決定します。
 社保加入の決定があると、年金額は一部停止状態となり、場合によっては遡って貰いすぎ分の返却ということになります。また、医療保険も国民健康保険から健康保険に切替となり、遡り問題があると国保使用医療費全額をいったん市役所へ返却しなければならないということになります。しかも会社は遡り最大2年間は社会保険料負担をしいられます。会社も労働者も踏んだり蹴ったり状態となり、雇用管理上気まずくなります。60歳以上の者が社保に加入しますと、年金額は一部支給停止される場合があります。
 したがって、年金を 全額受給することを希望する者は、賃金・労働時間について会社とよく話し合いする必要があります。社会保険に加入しない場合は、通常の労働者の勤務時間の3/4未満の労働契約を締結することにより希望通りとなります。この場合、健康保険・厚生年金保険には加入できませんが、雇用保険には加入できます。雇用保険の加入区分については短時間被保険者(1週間の労働時間が20時間以上 30時間未満)となります。この勤務条件で、60歳定年到達時に較べ一定額以上の賃金の減少がある場合には、減少額を補填する意味で、労働者は職業安定所に対し高年齢 雇用継続給付金の請求ができます。これにより、3箇所(会社・社会保険庁・職業安定所)から収 入を得ることができます。
 
 
3、満60歳等から老齢厚生年金を有利に受給する方法について その3
 【年金満額受給条件その3】(60才時点で528月に少し足りない場合には、勤務延長・嘱託勤務で引き続き厚生年金保険に加入し528月になるまで被保険者を続けること。平成18年4月1日施行で高年齢者雇用安定法が改正され、企業は最大限65才まで定年を延長することが義務づけられた。)
 厚生年金の被保険者期間が通算44年(528月)以上ある場合には、528月を満たした月の翌月から報酬比例分の年金に加え定額部分、加給年金の請求ができます。これを長期加入者の年金額の特例による支給といいます。従って、60才あるいは61才の時点で厚生年金の被保険者期間が528月あれば、63才・64才を待たずとも60才もしくは61才から年金は満額受給することができるのです。
 
、満60歳から在職老齢厚生年金の一部を受給する者の労働条件について
 【既存の厚生年金加入期間が短い人、年金額の少ない人】
  会社の定年が60才の場合、嘱託労働契約により、通常の労働者と同じ労働時間勤務することは で きます。したがって、この場合、健康保険 ・厚生年金保険に加入し、雇用保険の加入区分は一 般被保険者となります。また、60歳到達時に較べ賃金額が一定額以上減少した場合には、賃金保障のため、ハローワーク に対し、高年齢雇用継続給付金の請求ができます。60歳の時点で厚生年金被保険者期間が短く、将来受給する年金額の少ない者は、厚生年金の被保険者期間を延長することにより年金額の増額をはかることができます。また、在職中の給与が高ければ将来受給する年金額は多くなります。満60才以上65才未満の者については会社から受給する給与と年金月額が28万円を超えますと在職老齢厚生年金は一部停止されます。また、65才以上70才未満の者については、48万円を超えますと在職老齢厚生年金は一部停止されます。
5、満65才からの年金受給について
  満65才以上70才未満の者については、48万円を超えますと在職老齢厚生年金は一部停止されます。ただし、年金月額(受給する年金のうち報酬比例部分のみ停止額計算に算入する。基金加入者については基金に加入していなかったものとして計算する。)と給与月額の合計が48万円以下の場合には、支払年金額の停止はありません。
 
、満70才以上の在職老齢年金受給者について
  満70才以上になりますと、在職中で会社から受けとる給与額がいくらであろうと年金額の支給  停止措置は一切ありません。
 ※嘱託労働契約には、フルタイマー制とパート制の2種類があります。
 ※通常の労働者の勤務時間の3/4未満とは、一般労働者の実労働時間が8時間の場合には、6時   間未満で実務的には5時間30分程度です。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
7、年金受給者が雇用保険の失業給付を受給する場合について
 年金受給者が満60才から満65才の間に雇用保険制度から失業給付金を受給した場合、1日でも失業給付金を受給しますと、支給額の多少にかかわらずその月の1か月分の老齢厚生年金が支給停止されます。年金給付と失業給付の両方を同時に請求した場合には、失業給付が優先的に支給され年金給付は停止となります。
 満65才を過ぎますと、老齢厚生年金の受給者が同時に失業給付又は特例一時金の受給を受けても、老齢厚生年金の支給停止は一切ありません。
 平成15年4月30日以前〔旧法適用者〕に一般被保険者期間の20年以上ある者が60才となり、60才到達時賃金登録をし、その後嘱託勤務・パート勤務で雇用保険短時間被保険者となった場合、どのように失業給付が行われるかについて説明します。
 65才少し前の退職は、すぐ65才になるわけですから年金の支給停止の発生しない方法による退職のチャンスといえます。つまり、65才超えてからは年金給付と失業給付の両方が並行して受給できるからです。満60才前の雇用保険被保険者期間が20年以上と長い人の場合には、失業給付を受ける期間も150日と長期になるわけですから、満65才となる1、2か月前の退職が理想ともいえます。この場合には、60才到達時賃金登録証明書を離職証明書とみなして失業給付が行われます。 したがって、失業給付額は60才定年時で退職した場合に受給できる金額となりますので以下の場合に較べ多くなります。
 旧法適用者の場合で60才まで雇用保険一般被保険者、60才過ぎてからは嘱託勤務で短時間被保険者の人の場合であっても、65才過ぎて退職した場合には被保険者期間5年以上の人で50日分の失業給付が特例一時金として支給されて終了することになります。一時金の失業給付額も給与の下がった退職直前の嘱託勤務時の離職証明書により計算しますので給与額でいえば1か月強の金額の一時金の支払いということです。
 平成15年5月1日以降(新法適用者)に60才となり、その後嘱託の短時間勤務をした場合で、60才定年到達時賃金登録し、都合により65才前に退職し、失業給付を受ける場合には、短時間被保険者用の離職証明書に基づき失業給付が支給されます。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
萩原花子様の老齢厚生年金などの受給金額
                性別 女  本 人 生年月日昭和20年 2月27日
                     配偶者 生年月日昭和  年  月  日
    国民年金の被保険者期間         296 月
    国民年金免除期間                月
    国民年金基金加入期間              月
    厚生年金の被保険者期間           185月 H15.3.31以前の期間
    厚生年金の被保険者期間          22 月 H15.4.1以後の期間
    厚生年金基金の被保険者期間           月
                            月
    平均標準報酬月額         372912 円 H15.3.31以前の平月
    平均標準報酬月額         183400 円 H15.4.1以後の平月
    厚生年金基金の平均報酬月額           円
 特別支給の老齢厚生年金 報酬比例部分は60才支給開始 
 定額部分は生年月日に応じ、かつ男女で支給開始時期が相違する 
 定額部分はあなたの場合 60才から支給開始です  
  1、定額部分平成16 年度物価スライド率は0.988。
      1,676円×1.065 ×厚年月数 207 月×0.988=365049円
  2、報酬比例部分は60才から支給開始。ただし、配偶者加給金は定額部分支給まで給付され
    ません。
   報酬比例物価スライド率 平成16年度は1.031×0.988。旧乗率適用。
  @基金加入期間のない場合。総報酬制導入後、平均報酬月額に賞与分が含まれた。
     H15.3.31迄の期間分
     A  372912 円×7.72 /1000×185 月×1.031×0.988=542514
     H15.4.1以降の期間分
      B   183400 円×5.938 /1000× 22 月×1.031×0.988=24405
     C=A+B   566919円
  3、加給年金額                     円
  合計1+2+3+4+5=931968→932000円 百円未満四捨五入
   萩原花子さんの満60歳以降65才未満まで受け取ることとなる特別支給の老齢厚生
   年金額は、満額で932000円です。200000円の給与で在職老齢厚生年金・高
   年齢雇用継続給付金を受給する場合の年金額は、下記のとおり932000円です。
            さんの満6 歳以降受け取ることとなる特別支給の老齢厚生年金額
   は、満額で       円です。また、6 才以降受け取ることとなる特別支給の老齢
   厚生年金額は、満額で       円です。
         円の給与で在職老齢年金・高年齢雇用継続給付金を受給する場合の年金額は、
    別紙のとおり        円です。
 注目1 60才を超えて以降、1日5時間の嘱託パートタイマーとして厚生年金被保険者にな
     らずに勤務した場合は、給与がいくらであろうと年金額の減額は一切ありません。
 
 注目2 平成17年4月1日以降は年金月額と会社給与(60才以降も従来通り社保加入)
      を合算して月額28万円以下の場合には、年金の停止額は一切なくなりました。
 ◎ 萩原花子が60才以降も社保に加入して勤務する場合
   会社勤務の毎月給与は20万円。老齢年金年額932000円
   下記の年金停止額の計算をする場合、老齢年金の加給年金額、遺族年金の額、非常勤勤務の
  給与額、公務員期間の退職年金、損保・簡保・生保から受けとる年金は計算対象外となります
   200000円+(932000円÷12月)=277667円<28万円
   萩原花子の年金額の再計算は、65才又は65才未満の退社時点で行われる。
 
 ◎萩原花子が65才以降も会社勤務し社保加入の場合、毎月の会社給与と年金月額を合算し48
  万円以下の場合には、年金の停止措置は一切ありません。
 B.萩原花子の65才 から受給できる老齢厚生基礎年金の額は、1361000円
   萩原花子の65才以降の年金額は次の通りです。
     老齢基礎年金額794500円+老齢厚生年金額566919円= 合計1361000円
   萩原花子の65才の時点における厚生年金の被保険者期間が20年未満若しくは35才以上
   の期間が15年未満の場合には、自身の年金に振替加算(配偶者の年金に加給年金が付いて
   いた場合)が付加される場合があります。
 
                                以上