映画「不都合な真実」 と 「あずみ野観光バス事故」


「不都合な真実」の主演ともいうべき、元米国副大統領ゴア氏の実家は
タバコ栽培農家だった。そして、彼の姉は喫煙者で肺ガンになり
苦しんで
苦しんで
苦しんで
死んでいった…

ゴアの両親や祖父母は、当時、他人からタバコと肺ガンの関連を指摘されても
「一家が生活していく為には仕方がないんだ」と言い訳をしていたようだ。
しかし、「一家が生活していく為」に家族が死んだ。
………しばらくして、家族はタバコ栽培を止めてしまった。
もちろん、その為に家族全員が路頭に迷った…などということはなかった。
タバコを栽培しなくても、一家は生活ができたのだ。
ただ、タバコ栽培は儲かるから止めたくなかった……それだけのことだ。
タバコは効率よく稼げるお宝に見えていたに違いない。


あずみ野観光バスは、ほとんど家族経営に近いものだった。
両親が経営者で、長男・次男が運転手。もちろん両親もハンドルを握っていた。
以前から労働基準監督署が、労働実態の悪条件にクレームをつけていたようだが
一家は取り合わなかった。

「家族が食っていく為には仕方がないんだ」
きっと、そう答えていたことだろう。
雇用人数を減らして、その分家族で賄えばそれだけ人件費が安く済む。
経営効率上、何ら間違ってはいない。
しかし、それが原因で加重労働を生み事故が起きた。

長男の居眠り事故の為、同乗していた三男が死んだ。
「家族が食っていく為」にしたムリが家族を殺した。
いったい、何の為に彼らは働いていたのだろう?

両親はこれから経営者として刑事罰を受けねばならず
事故車の乗客から治療費等損害賠償をしなくてはならず
事故当時、おそらく契約していたバス運行契約は事実上破棄せねばならず
そのために違約金を請求されることになるのは明らか
そして、安全運転ができないバス会社と運行契約を結ぶような旅行業者が
いるはずもなく、文字通り彼ら一家は路頭に迷うことになるだろう。
「家族が食っていく為」にした結果のために…。


両者の共通点は、「効率」だと思う。
効率よく稼ぎたい為に、「それ」をしなくても生活できることを知っていながら
その道を選んでしまった。
結果、「一番大切なもの」を失ってしまった。

人間は「一番大切なもの」を失わなければ、「一番大切なこと」に
気が付かない生き物なのだろうか!?
「一番大切なこと」は効率でもお金でもない。


「幸せ」 だ