「演習」 bP  2000,9,12(火) 
  TOSSむしあなご  松本 俊樹
< 向山洋一先生の 「一字読解」の授業 >
 
■「吉四六話」の模擬授業
(8月18日の向山洋一DEEP教え方教室)
 
 伴先生がご自分の授業VTRを公開されました。
 一字読解の授業です。
 そのVTRが流れるやいなや向山先生は、うつしまるくんを開かれました。
 その中の「吉四六話」を取り上げられ、
 一字読解の模擬授業を公開されたのです。
 教材文を提示します。
 
    吉四六話
                瀬川 拓男 作
  吉四六どんは、小さいころから風変わりだったそうな。
  家のもんがみんな畑仕事に行くというので、小さい吉
 四六が、るす番をすることになった。
 
 これだけの教材文で8問を出されました。
 次々とテンポよく、やさしい問題を。
 しかも、組立がすごいのです。
 その場で教材文を見ての授業です。
 
 
1「自分のノートの新しいページを開きなさい。」
         
 :ノートの書き方をそろえさせる。
 

2「@A・・・とIまで1行1つずつノートに番号を書きなさい。」

 :1行に1つずつである。

3「これから読んでいきますから問題に答えなさい。」
 『吉四六話 瀬川拓男作』を教師が音読。
 
 :まずは題名と作者しか読まない。

@「1番、題名を書きなさい。」
 すぐ指名。
 :ほんとに待たない。あっという間に指名される。
  指名発表である。挙手指名ではない。
「吉四六話です。」

「漢字で書くのですよ。」
 :漢字で書くべきところはきちんと漢字で書くことを指導。

「赤鉛筆で○を付けなさい。」
 :漢字で書くと言うことを指導してから赤鉛筆で○付け
  をさせる。逆に言ってはだめである。

「間違った人は正しい答えを赤で書いておきなさい。」

 :間違ったらどうするかもここで指導。
  答えに全く揺れがない発問が1番目にあるからこそ答
  え方や間違ったときの処理の仕方の指導ができる。
 
A「2番、吉四六話の作者はだれですか。」
 すぐ指名。
「瀬川拓男です」
「作はいりません。」
 
:1問目に続きとことん簡単な問題である。
 「漢字で書く指導」がここで生きてくる。
 さらに「作」とある。
 「作はいりません」をはっきり示す。
 曖昧さは許されない。

「できました」の声。

*いつも言わなくてもいい。
 待たない。長く待たない。
 何回もやっていけばできるようになる。
 答えの解説を長くする必要ない。

 :「15秒以上」が長いのだろう。
  長くても一文(20字程度)で解説するくらいだろう。
 
*1文目のみ読む。

<吉四六どんは、小さいころから風変わりだったそうな。>

 :小刻みに読んでいく。
  考える範囲なり答える範囲が限定できる。
 
B「『吉四六どん』という言い方があります。
  吉四六どんをふつうの言い方にしなさい。」

 「吉四六どん→として答えを書きなさい。」
 「→吉四六さん」
 「場所によって『さん』を『どん』というのです。」

 :短い明確な解説である。
  4年生の国語では「方言」についても学習する。
  当然つながっているわけである。
           
C「吉四六どんが風変わりだったのはいつ頃からですか。」

 「小さいころから」

 :答えをはっきり復唱される。
 「ちいさいころ」では×である。

D「『風変わりだったそうな』に線を引きなさい。」
 ミニ定規で線を引く。

 :さらに問題を限定させる。
 
「このような言い方を何と言いますか。」

 「伝聞・推定」

 :抽象語を教える。教えるべきことはきちんと教える。

 「人から聞いたことやそのような意味のことを言う言い方です。」

 「『そうな』をふつうの言い方にしてその下に書きなさい。」

 :抽象語が出てきたらまた具体的な言葉に置き換えをさ
  せる。抽象と具体の往復がある。

 「そうだ」「そうです」

 両方答えが出る。

 :いったん両方認める。
  次の問題ではっきりと解が分かることとなる。
  2段構えの構成、反応によって構成する技量を見せつけられる。
 
E「人から聞いた話ではなくもし自分が見た話だったらどのように言いますか。」

 「風変わりだった」
 「よくできました」
 「風変わりでした」ではない。
 :「伝聞」→←「断定」の往復である。
 定着度が高まる。
 応用度が高まる。
 
F2文目を読む。

<家のもんがみんな畑仕事に行くというので、
 小さい吉四六が、るす番をする ことになった。>

「『家のもん』をふつうの言い方にしなさい。」

 :「どん」の時と同じような発問である。
 変化のある繰り返しである。

「『家のもん→』として家の何とかと書きなさい。」

 :答えの書き方も同じ方法をとらせる。ぶれがない。

「→家の者」「→家の人」

 :教師でも2つ出てくる。

「者と書いた人」挙手。

「○を付けなさい。」

「人と書いた人」挙手。

「○を付けなさい。」

 :ここは挙手させて分布を確認。
  一つ目の「○を付けなさい」で緊張と安堵が走る。
  ふたつ目の「○を付けなさい」で安堵感が広がる。
  両方○で終わらないのは一字読解の真骨頂である。
  次の発問に度肝を抜かれる。
           
G「『者』と『人』どちらがいいですか。」

 「者」

 「ものがもんとなったのです。」
 
*焦らなくてもいい。
 いったん○で終わらせる。
 こうやってゆっくりやっていく。
 すごく簡単なことをやっていく。
 
*短い時間にタンタンタンとやっていく。
 向山はいつからやっているか。
 新卒からやっている。
 
*学期に1〜2回。
【*印・・向山先生の解説。   :印・・松本の学び・コメント】