2 谷学級の社会科公開授業を分析する
  微細場面にも学び多い公開授業  
加古川市立志方小学校 TOSS兵庫むしあなごの会  松本 俊樹
 
 
(1)公開授業前の教室へ戻させる指導
 給食後、掃除・昼休みをこれから迎える谷学級の児童へ連絡がなされる。
「教室に帰りなさいという放送までに時計を見て行動しなさい。」という内容である。
「このように動けるのが谷学級の子どもです。」とも。
さすがに13:00には教室にきちんともどっている。
 如何なる場面でもより高い峰をめざす教師の姿がある。
それに呼応する子どもの姿があった。
ちなみに2校時後の長い休み時間後お子供達の戻り方は松本学級とほぼ同じであった。
 その時の子供達の戻り方から昼休みの戻り方の指導が行われたのかも知れない。
公開授業前に行われたことから考えてもある程度揃う時刻を決めたかったという意図は見て取れる。
「翼を下さい」の合唱指導、スマートボードの校正作業、
待ち時間での自分の意見の再構成・・・
開始15分前からドラマは始まったのだから。
 
(2)公開授業の布石は午前中の授業にもあった
 2校時は国語の授業であった。
向山実践「雪」の授業追試である。
「家は1軒か2軒か」の指名なし発表討論の場面であった。
前時の授業の終わりに新たな課題(発問)が示され次事の授業開始で
指名なし発表・討論という授業構成なのである。
しかも午前中すでに3名の参観者がある。
もちろん谷和樹氏は発表・討論のあと「1回でも発表したか」
「2回以上発表したか」「発表につなげたか」についても
5校時と同じ個別評定をしている。
 
(3)驚きの教科書・ノートの移動場面
 木村先生の算数授業で使う教科書、ノート、スキルを移動させる場面が午前中にあった。
「自分の場所に置いてきなさい」だった。
子供達はあっという間にもどってくる。
 ということは前日に体育館であの長机の授業を谷学級の子供達は経験しているのか?
 体育館には授業で行うとおり机が並んでいると思っていた。
しかし先に授業があるのは英会話(岡本先生)である。
机はない。昼休みに体育館に行くと机は壁際に置いてある。
壁際に置いてあるのに子供達の教科書やノートは言われたとおりに置いてある。
ということは前日(または前日までに)体育館で算数の授業の場所確認
(実際の授業)があり机の移動とどこに教科書などを置くかの場所確認も為されていたのであろう。
 
(4)この子どもの姿が語るもの
 社会科公開授業でもっとも活躍したなぁと思ったのは3名。
A君(左列の1番前)、K君にM君(左列まん中1番後ろ)である。
A君はキーワードの数が圧倒的に多い。
K君は討論でかなり中心になった。
日頃のやんちゃ君(らしき?)もきちんと授業場面では活躍している。
指名なし討論でも一番に発言していた。
いや、活躍の場を谷先生がきちんと保障していると言えるだろう。
 
(5)追試可能な授業である。
 谷先生の指示、「では、机を中央に向けなさい」ですぐに討論の机の形に移動する子供達。
机移動の指示ひとつとってもぶれない。
2校時に「雪」(三好達治)の授業があった。
向山実践追試である。
この時にも指名なし発表・討論場面があった。
発問「家は、一軒なのか、二軒なのか。」である。
この時も「では、机を中央に向けなさい」である。
余分がない、前置きがないからこそすぐにそのあとの発表・討論に子どもが集中できるのである。
 
(6)発表前の指導言も重要である。
 授業のメイン発問
「日清戦争に当時の首相伊藤博文は賛成だったか反対だったか。」
の発表前の子供達に谷先生は言った。

「では、発表前に賛成か、反対かを言ってから意見を言ってもらいましょう。どうぞ。
(文責・松本のメモから)
 
 極めて重要である。
「伊藤博文は日清戦争に賛成(反対)していたと思います。」の1文を入れるだけで
聞き手の思考が違ってくる。
自分と同じ立場なら「どこが自分の意見と同じなのか」
「どこが自分の意見と違うのか」「新しい考えはどこか」と思考が働く。
逆に違う立場と分かれば「どこが違うのか」「納得できるかどうか」
「反論するとしたら何と言えるか」という思考が働く。
発表前に自分の立場をもしも言わなかったらどうなるか。
「この意見はどちらなのだろう」のみである。
内容まで深く吟味などできようがない。
 
(7)授業を組み立てるロジックを見抜く
 公開授業の展開は次のようなステップである。
 1「課題」 @事前に示されている。A自分の立場を決め考え・理由をノートに書く。
       (授業前、付け加えがあれば書き込みなさいの指示。)
 2「指名なし発表・討論」
 3「評定」  *発表の仕方、追求の仕方についての評定である。
 4「感想発表」*新たな立場・意見の再確認
 5「さらに調べる」 @インターネット(キーワード・件数)A新資料B自分の意見