KJ法は向山洋一氏の「社会科における基本的な授業の流れ」につながる
               5年「放送局」 6年「貴族の時代」の実践
                          松本 俊樹
 
■向山洋一氏は「社会科における基本的な授業の流れ」を次のように示した。
(「社会科教育」誌1985,12 p30 明治図書)

一 まずはじめに、ある限定された場面の写真・表・得・実物などを示し、
 できる限り多くの考えを発表させる。
二 出された子供の意見を分類する。
三 分類したいくつかの課題に対して、それを確かめる授業をする。
四 (当然ながら、子供自身で調べられることは残しておくべきだろう。)
 それ以外の課題を子供に調査させる。
五 調べたことを発表させ、討論させる。
六 「分かったこと」「分からなかったこと」を確認する。
 
 「社会科における基本的な授業の流れ」の導入場面で1枚の写真(資料・実物など)を示す。
できる限り多くの意見を出させるには次のように発問する。

ア「この写真(絵など)を見て、わかること、気がついたこと、思ったこと  をノートに箇条書きにしなさい。」(向山洋一氏の発問)
 
■5年生3学期最初の社会科授業。
単元は「放送・通信」。
教科書(東京書籍5年下p9のあとの折り込みページ)にあるテレビ局の仕事の様子の絵を示す。
上記のように発問。まず5分間書く時間を確保。次のような指示も付け加える。

イ「ノートに5個書けた人から持ってきなさい。」
 
 ノートにどのくらい書けばいいか量の目安である。3学期であるからまずは5個でよいと判断した。

ウ「意見と意見の間は1行あけなさい。」
 
 この行あけが次の展開につながる。
作業のしやすさを生む。
いわば学習の仕方を指導しているのである。
書きっぱなしではなくあとで検討できるようにしたのである。
とりわけ「社会科における基本的な授業の流れ」の二の「分類」場面で威力を発揮させることができる。
 ノートを持ってきた児童に一つ意見を板書させる。
2回目に見せに来る児童は10個になっている。
1回目と同様に板書させる。
10分間で最高23個、最低1個という結果であった。

エ「目標は5年生×5年生ですから25個です。残念ながら一人も合格でき
  ませんでした。」
 
 今までに「5分間で25個」達成者は何名か出ているのだ。
このくらいの叱咤激励は必要である。
次の10分間では最高45個、最低4個。全員2倍以上の数の伸びであった。
この時点で黒板には36個の意見が板書された。
ぎっしりである。
板書した意見は発表させる。

オ「まだいっぱいノートに意見が残っていますね。少しでも違う意見ならば
  発表しなさい。」
 
 「『人が歩いている』という意見と『人がゆっくり歩いている』という意見は違うのです。」
と例を示す。グループ別指名なし発表を指示した。
6列のうち2列ずつに区切って指名なし発表させたのだ。
しかも、1グループ2分間と時間を区切る。
テンポよく発表が続く。
発表を聞きながら意見をノートに意見を書いている。
1グループ目の指名なし発表数36個。
発表数も児童に知らせる。
このグループ別指名なし発表を2巡させた。
12分間である。
そのうち4分間(2分間×2回)は自分のグループが発表している。
したがって10分間程度は書く時間を保障したと言えよう。
最高85個、最低14個。
発表された意見総計306個。
 たくさん出させた意見をどう展開させるか。
「二 出された子供の意見を分類する。」のである。
この時KJ法が有効である。
しかし、いきなりKJ法ではハードルが高すぎる。
次のようなステップが必要である。

1 ある一つの意見を取り上げて「似ている意見を見つけなさい」と指示する。
 
 例えば「マイクがある」を取り上げる。
「この意見に似ている意見を見つけなさい」と指示。
機械類に注目させることになる。

2 意見のまとまりに題名(タイトル)をつける。
 
 分類するときの観点を教えたのである。
 
■6年社会科の実践である。向山氏の実践の追試である。
「1)p18〜25(飛鳥時代から奈良時代7世紀から8世紀)で代表される人
 物はだれですか。5人以上ノートに箇条書きにしなさい。」
「1聖武天皇 2聖徳太子 3小野妹子 4中大兄皇子 5中臣鎌足 6鑑真
7蘇我氏 8行基(山上億良)はでなかった。)
「2)この時代はひとことでいってどんな時代ですか。
ひとつ書けたら見せに来なさい。」
「ア仏教を信じていた時代。
イ天皇の力が強くなった時代。
ウ税を納めなければ いけない時代。
エ大化改新をした時代。
オ使者達が文化を伝えた時代。
カ中国 へ留学した時代。
キ安らかになることを願った時代。
ク仏教をさかんにした時代。
ケ災害や反乱があった時代。
コ法律ができた時代。
サ大仏が作られる時代。 
シ仏教が伝わった時代。
ス他の国との交流が深くなった時代。
セ新しい国づく りが行われた時代」
 この時にポストイット1枚に1項目ずつ書かせる。
それを似た意見同士で並べさせる。
大まかな傾向が見えてくる。
「3)ア〜セはそれぞれどの人物に関係ありますか。
人物の名前の横に記号を書き入れなさい。
いくつ使ってもかまいません。」
「1聖武天皇 アイウキクケサス 2 聖徳太子 アイエオカキクコスセ
 3 小野妹子 オカス 4 中大兄皇子イエオカセ・・・・・(略:松本)」
「4)時代を代表する人物を1人選んで詳しく調べるとしたらだれにしますか。」
■「できる限り多くの意見を出させる」→「分類させる」という授業の流れには
「KJ法」を学習の仕方として指導しておくことは重要である。