3 この目で見た、谷学級の裏技・裏文化
  「感動をありがとう」授業前の合唱指導  
加古川市立志方小学校 TOSS兵庫むしあなごの会  松本 俊樹
 
 
1 公開授業前の感動
 歌の途中で涙する参観教師があった。歌の途中で涙する子供もあった。
いきなりの「感動」である。底知れぬ谷学級のすごさをまざまざと見せつけられる。
 朝から参観した松本だが1校時の音楽の授業の前半を知らない。
もしかしたら「翼を下さい」の合唱指導がなされていたかも知れない。
その上での5校時開始の1場面があったのだろう。
「感動」「すごい」ですませてはせっかくのライブ体験が自分の力量に反映できない。
いくつか分析の上、指導に当たっての必要条件を示す。

@ 教室の右前に集めた。
 
 どこで歌わせるか重要である。
「自席に立って歌わせる」
「前で(後ろで)横に並んで歌わせる」とは結果に大きな違いが生じたかも知れない。
 もしも「左前」に集めたとしたらどうだろうか。
「右前」よりも格段に落ちると推定できる。
次の理由からである。

1 参観者の多くに背を向けることになる。背中を見て歌を聴いても感動は薄まる。
2 窓際のカーテンに音が吸収されてしまう。
 
 谷先生が集めた「右前」がなぜよいのか。

1 参観者の多くに顔を向けることができる。顔を向けているのは歌の自信が(たぶ
 ん)ある女子。男子(特にやんちゃ君)は参観者に背を向ける位置。
2 角に向けて声を出すから響く。響くからよりたくさん声を出そうと歌える。
3 壁、窓、ドアに向けて声を出すから余計に響く。
 
 教室で歌わせるとき松本も「右前」に集めようと思う。
 さらにどちら向きに歌わせるのか。
これも重要だ。
たくさんの参観者の方を向けるのかどうか。
多くは@で述べたとおりである。
谷学級では壁・入り口の方を向かせた。
その間に教師が立つ。

A 向きに配慮があった。
 

B 指導のステップが心憎い。
 
 低音のパート、高音のパート、そして全体という順序である。
この順序だからうまくいく。

C 子供の集め方は輪
 
 教師を囲むように集める。だから声が集中する。

D 教師の表情は常に笑顔。
 
 だから安心して子供達は声が出せる。

E 音量の変化
 
 谷先生は歌の途中でテープ(CD)の音量を意図的に下げられた。
子供達は自分たちでこれだけ声が出せているんだと自信を持ったはずだ。
向山CDを聴きマネをする修業。途中で意図的に音量を絞りまたあげる。
その時に向山先生のリズムとテンポに合っているか確かめる。
同じような教育的行為がここでも為されている。
 以上の6項目ができたらすぐに感動の合唱が完成というわけにはいかない。
向山流個別指導や出だしの一音の指導なども重要である。
 
2 歌の指導のバリエーション
 幸いにも「合唱指導」について他の方法をお聞きすることができた。
いずれセミナーの講座等で公開されるらしい。項目のみ示す。

@ 前後2列にして歌わせる。
A 体育館の合唱練習でもピアノの周りに集める。
B ハモっているかアカペラで歌わせる。
C 教室の壁を背にして歌わせる。(対面式)
D 「相手の声が聞こえますか」と問う。          (以下・・・省略)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
(2)公開授業前の教室へ戻させる指導
 給食後、掃除・昼休みをこれから迎える谷学級の児童へ連絡がなされる。
 「教室に帰りなさいという放送までに時計を見て行動しなさい。」という内容である。
 「このように動けるのが谷学級の子どもです。」とも。
 さすがに13:00には教室にきちんともどっている。
 如何なる場面でもより高い峰をめざす教師の姿がある。それに呼応する子どもの姿があった。ちなみに2校時後の長い休み時間後お子供達の戻り方は松本学級とほぼ同じであった。
 その時の子供達の戻り方から昼休みの戻り方の指導が行われたのかも知れない。公開授業前に行われたことから考えてもある程度揃う時刻を決めたかったという意図は見て取れる。「翼を下さい」の合唱指導、スマートボードの校正作業、待ち時間での自分の意見の再構成・・・開始15分前からドラマは始まったのだから。
 
(3)公開授業の布石は午前中の授業にもあった
 2校時は国語の授業であった。向山実践「雪」の授業追試である。「家は1軒か2軒か」の指名なし発表討論の場面であった。前時の授業の終わりに新たな課題(発問)が示され時事の授業開始で指名なし発表・討論という授業構成なのである。しかも午前中すでに3名の参観者がある。もちろん谷和樹氏は発表・討論のあと「1回でも発表したか」「2回以上発表したか」「発表につなげたか」についても5校時と同じ個別評定をしている。
 
(4)驚きの教科書・ノートの移動場面
 木村先生の算数授業で使う教科書、ノート、スキルを移動させる場面が午前中にあった。
「自分の場所に置いてきなさい」だった。子供達はあっという間にもどってくる。
 ということは前日に体育館であの長机の授業を谷学級の子供達は経験しているのか?
 体育館には授業で行うとおり机が並んでいると思っていた。しかし先に授業があるのは英会話(岡本先生)である。机はない。昼休みに体育館に行くと机は壁際に置いてある。壁際に置いてあるのに子供達の教科書やノートは言われたとおりに置いてある。ということは前日(または前日までに)体育館で算数の授業の場所確認(実際の授業)があり机の移動とどこに教科書などを置くかの場所確認も為されていたのであろう。