(1)向山型社会発
 TOSS型インターネット活用調べ学習連続セミナー
 200427日(土) 15:40
 「向山型社会の神髄を語る
       『再現する』社会科の学習システム」
                   松本 俊樹
          TOSS関西中央事務局 TOSS兵庫播磨むしあなごの会
        〒675-0057 兵庫県加古川市東神吉町神吉475-27 0794-31-1067
                         mtoshiki@mvf.biglobe.ne.jp

 
1 向山型社会における「再現する」の定義
 向山氏は書いた。(1981、10,23 学年研究 授業研究検討の視点 bP)

「再現する」とは何か?
それは、ある方向の情報を選択しもう一度示すことである。
見学する、観察するとは情報を蓄積することであり、調査するとはある方向の情報を見つけることなのである。 (飛翔期「向山洋一 実物資料集 第6巻」p162 他)
 
 「内部情報を蓄積し、それを再整理して出力する学習」と言えよう。また、「見学・観察・調査などの体験→視点を与えた再現」とも言える。(兵庫 川原雅樹氏とのメール交換にて)川原氏は発信した。

 次の文もよくわかりますが、私は前者の定義がよくわかります。
「再現する学習」とは、「情報の収集、選択、整理の学習」だと考えること
ができると言うことです。(向山洋一年齢別p32)
 
 
2 向山型社会科における「再現する」社会科の具体的な実践
 次の3点が有名である。

1) 5年社会科の「工業地帯・仮説化」の学習
2) 6年社会科の「戦国時代」「福沢諭吉」の学習
 
 川原氏の見解である。

■ポイントは「調査」などの調べ学習も体験に入れることなのではないでしょうか。
1年 公園を観察して再現する。
2年 八百屋さんを観察して再現する。
3年 商店街を見学して気がついたことを発表する。
4年 校舎内の安全施設を調査し再現する。

例えば上のようなものを向山先生は再現する学習と呼んでいるようです。
(昭和56年度圧巻指導案p12参照)
有名な戦国時代の実践では「人物調べ」が調査の体験、内部情報の蓄積。
「どのように生きようとしたか」以後が、再整理、出力、再現部分。
 
3 「内部情報を蓄積し、それを再整理して出力する学習」のシステム 
 松本は「明治時代」の学習を次のように展開した。

1 【内部情報の蓄積】
 江戸時代(末期)の江戸の絵と明治期(文明開化)の絵を比較。
 「絵を比べて分かること、気がついたこと、思ったことをノートに箇条書きに
 しなさい。」(発表)

2 【内部情報の再整理】
@「2枚の絵を見てどのような変化があったかノートに箇条書きにしなさい。」
 (発表)
A「絵に出ていない変化を箇条書きにしなさい。」(発表)
B「このような大きな変化をもたらせたもの・できごとは何でしょう。」

3 【仮説をたて、それを証明する情報を集める】(実物資料集7巻p13他)
@「前の時代(江戸時代)の特徴をひとことで書きなさい。」
 ・幕府中心の時代・鎖国の時代
A「今の時代(明治時代)の特徴をひとことで書きなさい。」
  ・文明開化が花開く時代
B「明治時代を代表する人物をひとり選んで書きなさい。」
 ・高杉、西郷、大久保、岩倉、伊藤、坂本、福沢
C「Bで選んだ人はこの時代(明治時代)をどのように生きようとしましたか。
  できるだけ簡単に述べなさい。(→松本:一文で書きなさい。)」
 ・時代の流れを変え日本人が歩む方向を考えた。
D「Cを証明する出来事エピソード(事件)を5つ調べて書きなさい。」
 (「エピソード」って何ですか?と児童から質問。「事件です。」と教師が定義。
  「調べていいんですか」と質問。知識・情報がなければ書けないので「調べて
  も構いません」と指示。)
 1 世直しの動き
 2 各地で一揆・打ちこわし
 3 薩摩、長州を中心に討幕運動
 4 薩長同盟
 5 大政奉還
E「Dの中で1番大切な出来事・エピソード(事件)をひとつ選びなさい。」
 (同上) 3 薩摩、長州を中心に討幕運動
F「Eの理由を資料を使って説明しなさい。」
 
 ■資料(1)「児童のノート資料」参照。
 
 さらに実践は続く。

4 向山洋一実物資料集第7巻「六年社会科プリント 文明開化」の授業
 
 ■資料(2)「向山氏のプリント」参照
 
 何度か追試しているがいつも非常に盛り上がる授業になる。この授業をきっかけに子どもたちはさらにいろいろなこと(文明開化関係)を調べようという動きをつくることができる。

5 明治はじめて調べ
 1)何を調べるか
 @「明治時代になって新しく入ってきたものを調べて書きなさい。」
  ・食べ物、衣服、建物、乗り物、しくみ、道具、文化
  (個々のモノ→分類する)
  A「日本にはじめて入ってきたのはいつでしょうか。」
  「誰がどのように伝えたのでしょうか。」
  2)調べ方を決める
 @ 自分が調べる物は何か→ノートに「フォーマット」化
 A 調べ方を出させる。
        ア 国語辞典で調べる
        イ 百科事典で調べる
        ウ 図書室(館)で調べる
        エ 資料で調べる
        オ インターネットで調べる
         カ 博物館で調べる
        ・・・・・・・
 
 ■資料(3)「児童のノート」参照

6 「調べ方」を指導する
 1)国語辞典に出ているか。(ない)
 2)教科書、資料集に出ているか。(少し)
 3)教室の本、図書室の本に出ているか。(少し)
 4)さらに調べるには・・・・
   ア)インターネットで検索 → インターネットで検索させる授業
   イ)百科事典で調べる   → 百科事典を使った調べ方の授業
 
 
4 インターネット検索の授業と百科事典での調べ方の授業
 子どもたちが家で先にインターネット調べに行き着く可能性があったので次のような「キーワード検索」の授業をした。(1時間)

1)調べるためのキーワードを決めなさい。
2)そのキーワードで何件出てきたかメモしなさい。
3)ズバリ見つけることができたというキーワードを黒板に書きなさい。
 
 さらに「百科事典での調べ方」を指導する。

1)平凡社世界百科大事典を持ち込む。(1974,1975,1981年モノ)
2)索引と本文巻の区別(プリントを印刷)を教える。
3)食べ物「チョコレート」を例にして調べ方を示す。
4)索引で調べ記号の見方を教える。

  「16−513b」
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       →ノートに記録させる。
 
 ひとりひとりが別々の項目で調べるから数少ない百科事典でも調べ可能。辞書、事典、資料を調べた上でさらにインターネット上の調べ学習。(今回の場合は再度)