<学級通信「いちのに!」復刻 まえがきにかえて>
■10年前の1年生担任時のことである。
1学期の中頃だった。
体重測定に連れて行くときの指導場面だった。
名前順に教室の後ろに並ばせての出発前。
次のように指示をしたのだ。
「教室にもどってきたら服を着て算数セットでお勉強します。」
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教室にもどって空白の時間ができたら教室が
騒乱状態になるかも知れない。
「空白禁止の原則」に従い最後の行動まで指示したのだ。
「では出発しましょう」と進みはじめると
みんなとちがう動きをする女子が目に入った。
何と後ろのロッカーから算数セットを持ち出そうとしているのだ。
当時の未熟な松本にとっては全く予期できない
不可解な行動だった。
(こんな思いもしなかった場面がいくつか出ています。)
■その後、次のように改善するようにした。
教室を出るときにもどってきてからの指示はしない。
保健室を出るときに指示をする。
しかも、最初の子が終わって教室にもどる場面である。
これで次に何をすればよいかが伝わる。
これで50点。黒板に指示を書いて60点。
今ならどうするか。
さらに出発前の活動に算数セットの活動を入れておく。
「教室にもどってきたら服を着ます。
そして算数セットのつづきをします。」
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■向山学級では3,4時間目が図工などの専科で
教室移動の時どういう動きをしているか。
机を給食の並びに変え給食当番はエプロンを
机の上に準備しているというのだ。
専科の授業が終わって教室にもどる。
机の並びや机の上の準備が目に入る。
「給食の準備をしなさい!!」などといちいち
指示しなくても子どもたちは動けるようになるのだ。
1年生への指導にも「向山式システム」は有効だった。
■となると先の女子の行動はあながち不可解な
行動ではなくなる。
いや教師の思いを越えたすばらしい行為である。
算数セットを持ち出した女子は「あらかじめ準備をしておく」
という思想ではなかったのか。
10年前には見えなかったことだ。
■以上のような1年生の教室でのささいな出来事から
指導の方法や原則めいたことを法則化論文に書いた。
(97年夏兵庫合宿)
HPにアップしTOSSランドhttp://www.tos-land.net/に
登録する予定である。ごらんいただければ幸いである。
■松本は今までに1年生を2回担任した。
(平成5年度・9年度)
この復刻版・学級通信「いちのに!」は1年生を
はじめて担任したときに発行した記録である。
機会があれば2回目の1年生担任時の学級通信も
お読みいただければと思う。
■10年前の3月31日に1年生担任を命じられ
びっくりしたことを覚えている。
もちろんすぐに1年生の学級経営、授業づくりについて
情報を集め回った。
当時の多くの書籍・資料の中で役に立ったのは
法則化シリーズ(現在の教育技術大系)を始め
法則化関係の書籍だった。
もちろん「バイブル」的存在は「1年の学級経営
教師であることを怖れつつ」(明治図書 向山洋一著)
「学年集団形成の筋道と実践 学年通信 あのね」
(明治図書 向山洋一他著)だった。
■「いちのに!」の子どもたちを2年(別クラス)、
4年、6年と担任した。
1年生の入学式で迎えた子らを6年生の卒業式で
送り出すことができたのだ。
別れの場面では向山氏の実践に倣い
「入学してはじめて書いた名前」を示しながらの
メッセージを送った。
教師生活で2度とないだろうと思うくらいの幸運な機会をいただいた。
■TOSS岡山MAK例会に持参した持っていた
学級通信が甲本卓司氏、
小野隆行氏、赤木雅美氏の目に留まり復刻することができた。
赤木氏によると「他の学年の通信も読んでみたい」とのこと。
これからも昔の自分の実践を「自己否定」しつつ若さ、
熱意、行動力、謙虚さを忘れずに教師修業に励むつもりである。
松本 俊樹