二学期・シルバーの三日間が学級経営の決め手になる                                                       松本 俊樹
 
 
1 二学期の出会いは四月の出会いと同じである
 二学期のスタートの心構えはただひとつ。
「新しい学年が始まるんだ!!」
 一学期間に身につけさせたことを子どもたちはすべて忘れ去っていると心得よう。
持ち物や身のまわりのこと。(筆箱の中身や道具箱の中身)挨拶や返事・
後かたづけなどの基本的な生活習慣。学習に関すること。(本読み、計算、書く力、漢字・・・)
 したがって、一学期の終わりに行った漢字・計算のまとめテストを二学期のスタートに実施するとよい。
すべてこの夏休み中に忘れ去ったんだと思って指導をスタートさせる心づもりにもなる。
ただし、一学期間かかったことを速い子で二週間で、遅い子でも一ヶ月で取り戻してくれる。
夏休み中のいろいろな経験が子ども達の成長となって現れてくるのだ。
松本は、二学期も一学期と同じような心構えで取り組んだ。

1 「おはようございます」の挨拶に「今日一日よろしくお願いします」の気持ちをこめる。
2 「はい」という返事に「はい、何なりとおっしゃって下さい。」のメッセージを入れる。
3 「さようなら」の挨拶に「今日一日ありがとうございました」の気持ちをこめる。
 
 朝のあいさつ、出会いの挨拶をもちろん教師自ら行う。
心をこめて、「氣」を送るつもりで挨拶。
顔を向かい合わせて挨拶。
すると、子どもの顔が見えてくる。
表情が見えてくる。
 「何を食べてきたのかな?」「朝、起こされてきたのかな?」など思い浮かぶ。
 不思議なことに子どもの挨拶が小さくても、返答がなくても腹が立たない。
 挨拶を返さないというメッセージをもらえたからだである。
ありがたいメッセージである。
 別の機会に、名前を入れた挨拶をする。
「松本君、おはようございます」。
 以前とは違うかすかな変化を見て取れる。
変化が見て取れた自分自身がうれしい。
挨拶された子も顔を向けてくるとなおのことうれしい。
顔が向いてきたら一言声をかけることも可能。
 さらに自戒をひとつ。
「子どもが動かないのは教師の指示がまずいのである。」
 いきなり全員に「後ろに並びなさい」と指示を発するのではなく、
「机の上を片づけた人立ちなさい。」と動きを入れつつ指示をするのである。
 
2 二学期のスタートに転入生を迎えることはうれしいできごとである
 出会いの場面では教師が転入生のところへ駆け寄る。
もちろん「安心感」を持ってもらうため。
転入生にとってどんな人が先生なのかまっ先に知りたいのだ。
さらに握手。
しっかりと「つながり」を意識してもらうために。
 「松本先生です」とはっきり自己紹介。
このような教師の動きや所作をクラスの子は見ているのである。
 すぐに、転入生の○○さん係を募集する。
(向山実践追試)トイレ、職員室、保健室、靴箱、棚などはその日の内に教える。
教室へ移動している間に可能である。
 以下に松本がチェックした項目を紹介する。

1 席を教える
  まわりが見渡せる場所がよい。隣はT君。やさしい子。
  今まで知らない子が隣にいる方が新しい彼らしさを引き出せそう。
2 自己紹介
  指名なし自己紹介・得意なことも付け加えて・
  場所は広場で円になって
  自己紹介後ゲームをいくつか予定
3 確認事項
  健康面、家庭連絡、登校班、通学路、兄弟関係
4 クラスの組織
  係、当番、名前カード、掃除、給食
5 準備物確認
  教科書、ノート、スキル、図書カード、代本板、諸費集金袋、はんこ、貯金袋、時間割、名札
6 生活面
  棚、座席調整、靴箱、名前順、並ぶ順、二人組
7 学習技能 連絡ノートの書き方は?(             )
       夏休みの作品提出は? (             )
       自己紹介では?    (             )
8 とにかく「教室は楽しいところ」だ、「安心して話せる先生でありクラスの友達である」と印象づける
 
 
3 二学期スタート・・・・第一日目の黒板から仕掛ける。
 次のようなメッセージを書いておく。

 おはようございます。
 まだまだ あつい日が
 つづきます。
 もりもりたべて 強く
 とことん がんばって かしこく
 ともだちに やさしく
 しっかり 勉強
 気もちを ひきしめて がんばろう
 
 二学期の出会いの挨拶の後、板書を読ませる。「これには秘密があるよ!!」と問いかける。
 連絡ノートにも視写させる。
書く速さに差があるので一行ずつ消しながらやや追い込む。
 
 一日目ということではりきっている子も多いだろう。
そんな動きを見逃すようでは子どもは変容しない。
 すぐに窓を開けてくれる子、新学期用のスキルやテストを運んでくれる子、
配布物の手伝い。
久しぶりの出会いなので教師にもこのようなささいなことが新鮮である。
 
4 向山型夏休み作品発表会でその場で赤ペンコメントが完成する
 絶対お得の夏休み作品発表会一二のポイントを紹介する。(向山実践追試)
 夏休み明けの作品処理が一時間で終了。さらにプラスα有り。
 子どもたちに夏休みの作品をみんなの前で発表させる。
その場でできる教師のコメントの書き方は次の通り。

1 必ず呼びかけの形の文で書く。
 
 「○○さんへ                        
  とってもすてきな貯金箱が出来ましたね。
  いっぱいいっぱいお金を入れたくなります。
  お金が入ると音が鳴るようにしたところがすごいアイデアです。」
(コメント例は松本の作文)      

2 コメント用紙を人数分(プラスα)用意しておく。
 
 書き損じの時のために用意しておく。
 また、作品を二つ三つ作ってきた強者もいる。
多めに用意しておくことはいうまでもない。

3 コメント用紙は色画用紙(ピンク)B6の大きさがよい。
 
 薄いピンクというのが向山先生のお薦め。大きさはスキルの半分くらい。
 教え方教室等で向山先生より直接お聞きすることができた。

4 コメントを書くペンは赤のサインペン。
 
 太めでよい。太めでかくと見栄えもするしぎっしりに見える。

5 「○○さんへ」だけあらかじめ書いておく。
 
 子どもの発表を聞きながらコメントを書くのである。
 慣れないと子どもの発表に追いつかない。余りにも短い発表だとなおさらである。

6 原則、本人の発表内容をなぞったコメントで充分だいじょうぶ。
 
「手の部分を曲げるときが難しかったです。」(発表)
 →「手の部分の曲げの苦労がしのばれます。
   とっても難しい作業がよくできたね。」(文例は松本)

7 二00字程度(三0秒)は発表させたい。
 
 発表が一文程度ではコメントは書けない。教師が問いを入れてもよい。
 「材料は何ですか?」「どうやって手に入れましたか?」

8 発表の形を「アウトラインシステム」(大森修氏)で書かせてもよい。
 
  「ぼくの(私の)作品は○○です。
   作品を作ってみた感想は・・・・
   一番アピールしたいところは○○です。
   苦労したところは・・・・
   うまくいったところは・・・・
   よく見てほしいところは・・・・
   どうしてかというと・・・・・
   このように・・・・・
   あらためて・・・・・」  (形式は松本が変えている)

9 この方法は作品発表会だけでなく作品鑑賞会や社会科調べ発表会などあらゆる時に活 用可能。 時間をとらずその場で出来上がる。
 
 その上一番印象的な文章になる。何しろ臨場感あふれた場面で書いているからだ。
 書いたコメントはコピーして保管しておこう。通知票所見作成時におおいに役立つ!!
 休み明けすぐの作品展に教師のコメントが入っているので保護者からは驚きの声!!まちがいなし!!
 
5 子どもを見つめることは願いをこめるということである
 新学期の出会いの新鮮さは格別である。いつもは見逃してしまうような子どもの姿・動きが心なしか印象深い。 私は会議前か何かの待ち時間などのすき間時間を見つけては記録することにしている。
 「放課後の孤独な時間」(向山実践)の追試でもある。

(Aさん)勢い・明るさをこの調子で持ち続けてほしい。全体へ広げていけるように。1日のまとめ・できごとをノートする力は抜群。学習のまとめで自分や友人を見つめる目につなげる。「あのね」に出ていた「ねがい」「郵便」の記述をこれからも期待したい。
(Bさん)Aさんと近く同じ班でどう「生き生き」や「はつらつさ」がでてくるかが楽しみ。姉に影響を受けつつ一歩進んだ見方を期待。
(Cさん)隣がT君。けんか?それとも伸びつつあるT君へ好影響か?自分やまわりを冷静に見つめることが出きる。
(D君)牛乳パック片づけや二重跳び等自分のできないことやできにくいことへの意識はとても高い。向上心旺盛。それを援助していくこと。温かく見守りたい。                                                                 (以下略)
 
 一人一人への「願い」が強く出ているメモである。他との関わりを強く意識していたことが分かる。
 1ヶ月後の記録メモと比べてみると新たな発見や変容が見えてくる。
 
6 係活動を少し再編する
 シルバーの三日間には当番活動とともに係活動も決めておく。
 まずは次のように伝える。

1 一学期と同じ係でもいいし違っていてもいい。
2 いくつやってもいい。(一人必ず一個)
 
 あらかじめどんな係があればいいか考えてくるように予告しておく。
 「自分がなりたい係だけじゃなくて、クラスにあればいいなぁという係でもいいんだよ。」
 まずたずねる。「どんな係があったらいいですか?」
 どんどん発表してもらう。そして、何係になるか希望を聞く前にすることがある。
 「同じ係だというものはありませんか?」例えば本係と図書係が重なっている。本・図書係となる。
 「くっつけるといい係はありませんか?」 例えば電気係とテレビ係がくっつく。
 「自分でやればいいという係はありませんか?」「机係!!」
 わけも発表させる。
 「自分でやればいいからです。」二年生らしい理由だ。
 全員希望通りの係に就かせる。
 人数が多ければ二つ三つ作る。
 どうしても必要な係に希望がなければ二つ目の希望をとればよい。
 希望が通るからやってやろうとなるのだ。