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内部情報の蓄積と再構成で「聖武天皇と奈良の大仏づくり」
(六年 社会)を知的な授業


松本 俊樹(TOSS兵庫播磨むしあなごの会)

奈良の大仏や聖武天皇について内部情報の蓄積と再構成によって知的な授業が可能である。


1 内部情報の蓄積 「聖武天皇と奈良の大仏づくり」(六年社会)


 有田式ワークの大仏づくりの絵を配布する。次のような指示・発問で内部情報を蓄積させる。


指示1 色をぬりなさい。
発問1 何を作っているのでしょう。
発問2 いつごろの絵でしょう。
発問3 教科書・資料集の何ページを見るとよいか
発問2 いつごろの絵でしょう。
発問3 教科書・資料集の何ページを見るとよいか。
指示2 絵を見てしていることを10個以上見つけてノートに箇条書きしなさい。
(ここまで第1時)
指示3 調べてみたいことやはてなを10個以上作りなさい。
(ここまで第2時)
指示4 はてなから5個選んでノート見開き2ページにまとめなさい。
(第3、4時)


 発問1に対しては「奈良の大仏」との答え。更に突っ込む。「正式の名前は?」

 「大仏様に正式の名前などあるの?」といった雰囲気だが「毘る舎那仏」という名前も調べてくる。
 発問2に対しては「奈良時代」「八世紀」という大まかなとらえ方から、この絵の時代特定にまで迫る児童も出てくる。
 「鋳造を始めたのは七四七年九月二九日。終わったのは、七四九年十月二四日。
 絵は大仏の上の部分であるから七四九年頃であろう。」
(「奈良の大仏」(香取忠彦 草思社)を調べた発表。)

 絵にはたくさんの人の動きが描かれているので指示2に対しては書きやすい。

・監督をしている。 ・炭か何かをいれている。
・ふいごをふんでいる。 ・かごで何かを運んでいる。
・銅を流し込んでいる。 ・ぐったりした人がいる。
・材料を運んでいる。 ・倒れた人を助けている。
・大仏を作っている。 ・棒で何かを突いている。


発問3によってさっそく新たな情報を取り入れることができている。

「銅を使った」「ふいごで風を送った」など。


第2時は書いたことを黒板に書かせて発表させるところから始める。

その後書かれたことについての質問を聞く。

「ふいごとは何か」「材料は他にもあるのではないか」「運んでいる材料は何か」など。

指示3でどのような「はてな(問題)」が出てくるか。これも黒板に書かせる。

1 なぜ大仏を作ったのか。
2 大仏の大きさや重さはどのくらいか。
3 9年も書けて作ったわけはなにか。
4 どんな道具が使われていたのか。
5 大仏をどのように作ったのか。
6 銅以外の材料は何か。
7 大仏づくりの人数はどのくらいか。
8 大仏づくりをした人は好きでやったのか。
9 銅はどこからもってきたのか。
10 昔の人はそんなにまでして大仏づくりをしたかったのか。
11 働いている人は監督についてどう思っていたか。
12 どういうふうに人を集めたのか。
13 大仏のモデルはだれか。
14 古墳づくりと大仏づくりはどちらがたいへんか。
15 監督にはどんな人がなるか。
16 大仏づくりはどこから伝えられたのか。
17 銅の中に入れている棒はとけないのか。
18 大仏のおでこについている点は何の意味があるのか。 (など)


 ここで自分の「はてな」の解決状況を振り返らせる。家庭学習で解決済みの児童もある。
 「自分の作った問題について解決している番号に○をつけなさい。」
黒板に書かせたのは18個であった。
 「この中から五つ選んで調べてもらいます。」
 選んだ番号と問題をノートに書かせる。 調べる上で次のような指示をつけ加えた。


ア 好きな問題、分かりやすい問題、調べやすい問題から進めなさい。
イ 自分の考えやカン、予想を初めに書こう。                                               ウ 何を見て調べたかもメモしておこう。
エ 新しい「はてな」が出てきたらさらに調べてみよう。


 次のような見開き2ページにまとめさせた。 (資料参照)
 全員分を印刷して配布した。
 以上の学習による内部情報の蓄積のが見開き2ページに表れている。 

2 内部情報の再構成

 次のよう発問指示で内部情報の再構成を図った。

発問4 聖武天皇はなぜ大仏を作らせたのか。


 聖武天皇の願いに迫らせる。教科書や資料集に示されている訴えなどが手がかりになる。

・仏の世界に近づきたい。
・仏教の力で平和な世の中にしたかったから。 
・伝染病などをなくそうとしたから。

発問5 大仏づくりはすんなりとうまくいったか。


 「うまくいった」8人、「いかなかった」29人で討論。
 「うまくいった」派は「天皇の命令だから」「行基の力があったから」と主張。

 「うまくいかなかった」派は「貴族同士の争いがあったので政治をしている人の心も乱れていたから」

 「そう簡単にこんな大仕事がうまくいくはずがない」

 「水銀などを使っているので水俣病みたいなこともあっただろう」と主張。

 第4時はここまで。学習のまとめを書かせる。

発問6 人々は大仏づくりに喜んで参加したか。いやいや参加したか。
(西尾発問修正追試 「第4期教育技術の法則化39」明治図書 P49)


発問5と同じような分布になった。そして討論。それぞれの根拠を示す。

<喜んで>
・大仏づくりは人々の誇りであった
・聖武天皇の訴えにみんな協力した
・行基(生き仏)とともに人々も協力した
・瓦を寄付している


<いやいや>
・農民の暮らしは苦しかった

・9年間も仕事をづづけるのは大変
・けが人・病人・水銀中毒があった

*自分の仕事があるのに大仏づくりなんかできない


 それぞれへ意見の後*印の理由を取り上げた。

発問7 働いた人たちに給料はあったでしょうか。(「社会科教育別冊 NO2 教科書にない疑問にこたえる歴
史資料集」明治図書 P64)


子どもたちは「うまくいった」・・「喜んで参加した」・・「給料はあった」という思考の流れになっている。対立するのは「うまくいかなかった」・・「いやいや参加」・・「給料なんかなかった」という思考である。
 「給料はあった」という事実を示す。「喜んで参加」派は32人にまで増えた。   (ここまでが第5時)

 「大仏を作ったときの人々の願い」にさらに迫らせたい。「社会科教育」1987、9 向山実践の追試である。

発問8 奈良時代の農民の暮らしはよかったでしょうかよくなかったでしょうか


「逃げ出す人がいた」「縦穴式住居に住んでいる」「逃げる子ともできなかった人もいたという」「税の負担が重かった」といった理由(教科書や資料集から)で「よくなかった」とする子が大多数。
 そんな時代に大仏づくりの材料である銅の集め方を予想させた。

「銅山を開発する」「外国から輸入する」「今まで作った仏様を溶かした」「寄付してもらった」という予想が出た。

根拠を言い合わせおかしい点などを指摘させた後、多くは「寄付」であった事実を知らせる。

発問9 どのくらいの人が銅を寄付したでしょうか。


 奈良時代の総人口や平城京に住む貴族の人口をもとに予想させた後「三十七万二千七十五人」と知らせた。
 感想を書かせて終える。


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