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4年「暮らしを支える電気」の授業づくり


松本 俊樹(TOSS兵庫播磨むしあなごの会)

どのような考えで「エネルギー教育」に取り組むのか。

1 近未来の社会を見据えた授業実践こそ必要である


 これからの10年後、20年後の日本で大きな社会問題となっていると考えられることは何か。環境問題、人口問題、高齢化問題、難民問題、・・・・とりわけ重要な問題は「エネルギー問題」である。

 近い将来、エネルギー問題は、「国家の大事」として浮上する。教師とし
ても、今から、授業をしていくことは大事だ。「いじめ」は大きな問題だが
「いじめ」で戦争になることはない。しかし、「エネルギー問題」は戦争を
引き起こすほどの大問題である。戦争を引き起こすほどの大問題を正しく
授業しないのであれば「教え子を再び戦争に送るな」と深く反省した間違
いを再び犯すことになる。「エネルギー問題」は「戦争につながる大問題」
なのである。 (「現代教育科学」1998年4月号 向山洋一)

2 どのように授業を組み立てるのか。


 「風評」に惑わされずあくまでも「事実」を大切にして授業を組み立てなければならない。そのためには次の3点が重要である。

@ 日付、数値、根拠などを具体的なデータを可能な限り集める。
A 公的な公式の発表を踏まえる。
B 実際の現場を実際に自分の目で見る。

3 4年生1学期単元「くらしをささえる水」の発展として授業する


(1)単元の目標は「水」の発展としてとらえることができる
 ア、電気の確保に関心をもち、進んで調べたり話し合ったりしながら自分たちも地   域の一員であるとの自覚をもつことができる。
 イ、電気の確保等の活動と、健康な生活の維持と向上の関係を人々の願いや協    力と関連づけて考えることができる。
 ウ、1枚の絵やグラフから問題を発見し、「歩く、見る、聞く」等の体験的活動を通し   て調べ、資料をまとめたり話し合ったりすることができる。
 エ、電気の確保のためにさまざまな施設や設備があることやそれらの維持等の活   動をする人々に電気が支えられていることが分かる。

(2)「生活との関わりの中で、自ら学びとる社会科学習」(研究主題)
  現代、家庭や学校、会社に電気製品があふれ、当たり前のように便利な生活を送っている。しかし、平成7年1月17日に起こった阪神淡路大震災により、電気のない生活を目の当たりにし、改めて電気のありがたさを感じた。 ところが、その電気のもとである化石燃料、その中心である石油の可採年数が、あと40年ほどになっている。産業界では、オイルショック以降、省エネに努力し、世界で最も成果を上げた。電力業界は、化石燃料はCO2を 排出し、地球温暖化に結びつくことからも、効率のよい原子力発電を取り入れてきた。また、より安全でクリーンな、新エネルギーの開発は急がれる。現段階では、代替エネルギーは、全エネルギー供給の数%くらいが限度だという。高速増殖炉の開発に成功すれば、数千年使えるといわれている。
  本学級の児童も、特に意識することなく、当たり前のように電気を使っている。4年生でも、音楽CDを聴いたり、コンピュータゲームをするのがふつうになってきている。児童は、4月から、一枚の絵から多くの情報を読み取る学習をしてきた。また、水調べ、ゴミ調べ、消防調べとして足を使って情報を得る学習をしてきてきている。浄水場や下水処理場見学時には1ヶ月の電気代が数億円にもなることを聞き、水を得たり環境を守るためにも電気が使われていることを始めて知った児童も多い。ただ、調べたり見つけたことをうまく友だちに伝えるまでにはいたっていない。
  指導にあたっては、「電気」の学習を、「水」の学習の発展的教材として位置づける。発電方法や資源の確保について、エネルギー資源を持たない日本にとってはさけて通ることのできない問題である。深入りはしないが、資料を通し、現在のエネルギー供給に原子力が重要な位置づけにあることを知らせ、子どもたちに自分の考えを持たせたい。省エネルギーに関しては、待機電力の大きさを知らせ、ライフスタイルについて見直させたい。近未来のエネルギー供給に関し、価値を押しつけるのではなく、資料をもとに、自分なりに判断させたいと考えている。また、兵庫県の学習では電気の確保を県レベルで追究させたい。

(3)指導計画(全10時間)は次の通りである
   第一次 電気とくらし         ……………………… 2時間
    第1時 「夜の地球」の写真のメッセージは?
    第2時 くらしの中から電気をさがそう
第二次 電気を調べよう        ……………………… 5時間
    第1時 もしも電気がなかったら
    第2時 昔と今どっちが得か 
    第3時 電気はどこからどのように来るのだろう
    第4時 電気はどのように作られるのだろう
    第5時 電気を支える人について知ろう
   第三次 電気とわたしたちの未来は?  ……………………… 3時間
第1時 これからの電気はどうなるだろう?(後述の授業記録部分)
    第2時 自分たちにできることは何だろう
    第3時 電力会社の人の考えを聞こう

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