「誰もがすっきり同じ要約文になる」向山型要約指導法の第1歩
 「桃太郎」の要約指導ステップ7(松本俊樹)   2003,2,13(木)
 
■冒頭から申し訳ない。
ステップ7ではおさまらない。
以下に示す。
 
1 「桃太郎」漢字で書きなさい。

1 「桃太郎」と漢字で書かせる。
 
 「20字以内」と字数を考えるときに有効になる。
TOSS熊本の「教師修業」の椿原実践に学んだ。
 
2 桃太郎の話を知っていますか?お話をしてご覧なさい。

2 まず、子どもたちに「桃太郎」の話をさせる。
 
 多くの児童は「知っている」と答えるであろう。
何名か指名して話をさせる。
話をすることが要約につながるのだ。

3 児童発「桃太郎」の話を個別評定する。
 
 それまでの雰囲気が一変する。
「桃太郎」「犬、猿、キジ」「鬼退治」の
キーワードと共に話の長さで評定する。
ふざけた話でなければ最低でも50点。
個別評定の構えを作らせるのである。
キーワードについてはここでは言及する必要はない。
 もしも、児童からの話が不十分であれば教師が語って聞かせる。
どうしても自信がなければTOSSランドのサイト
(松藤司氏作成)を使う。
 
3 桃太郎の話を20字以内に要約しなさい。

4 話のあとはいきなり20字以内に要約させる。
 
 「要約」とは何ですかと質問を受けるかも知れない。
「お話を短くまとめること」と説明する。

5 20字以上になってもいいからまずは書かせる。
 
 先に字数を考えるとどうしても書けなくなる。
「長くなってもいいから書いてご覧なさい。」と指示する。
 
4 書けた人は持ってきなさい。

6 書けた文はすべて○をつける。
 
 正解不正解の意味ではない。
自分が書いて見せたという印である。
しかし、児童は○をもらうだけで十分に安心する。 
 
5 ○をもらった人は黒板に書きなさい。

7 書いた文を板書させる。
 
 次のような意図がある。

ア 早い子と遅い子の時間調整。
イ 全く??の子へのヒント。(「写しなさい」の指示)
ウ 書かせるから何が大事か見えてくる。
 
 授業の次(個別評定)につながるのである。
 
6 発表しなさい。(書いた通りに読ませる)
  点数をつけます。

8 個別評定する。
 
 キーワード3つとして一つにつき3(30)点。
 
7 ようやくするには大事な言葉「キーワード」を見つけます。
 3つ見つけるのです。
 「桃太郎」の話でこれがなければダメだという言葉は何ですか?
それが第1キーワードです。

9 まず、第1キーワードを確定する。
 
 「桃太郎」である。主人公である。
 
8 つぎに大事なキーワードは何ですか。
  桃太郎が要するに何をしたかというのです。

10 第1キーワードの述語が第2キーワード。
 
 「鬼退治」である。「吉備団子をあげた」
「宝を奪い返した」などが出る。「×」でよい。
「何のために吉備団子をあげたのか?」などと問い返しが可能なら行う。
 
9 3番目のキーワードは何ですか。
 「犬、猿、雉」である。
 
10 「桃太郎」「鬼退治」「犬・猿・雉」を使って20字以内に要約しなさい。

11 キーワードをもとに2回目の要約に挑戦させる。
 
 個別評定する。
 9(90)点が最高であろう。
 
11 一番大事な言葉「桃太郎」を最後にした文にしなさい。
 体言止めと言います。

12 第1キーワードを体言止めにさせる。
 
 3回目の個別評定である。
 10(100)点の要約文を写させる。

13 字数合わせのために漢字を使わせる。
 
 助詞の使い方も含めて字数合わせの仕方を教える。

14 よりよい要約文に挑戦させる。
 
「犬猿雉と鬼退治した桃太郎。」(句点を入れて)
13字である。まだ言葉が入るのだ。

ア 「犬猿雉をともにして鬼退治した桃太郎。」(18字)
イ 「犬猿雉を連れて鬼退治した桃太郎。」(16字)
 
 どちらがよりよいか。検討させてもよい。
 
■参考資料
(1)TOSSランド1117159「向山型要約指導法」
「桃太郎」の要約指導」,「段落要約指導」,「全文要約指導」
のエキスを抽出したものです。(TOSS山梨ML推薦) 千野毅
<向山式要約指導基本編(「桃太郎」の要約指導法)>
 
1,桃太郎の話を20字以内にまとめなさい。
 句読点も字数に入れます。
  子どもたちは、ノートにまとめていく。
 「20字にこだわらないで、まず書いてごらんなさい。
 一度書いてしまってから、20字に削っていきなさい」
 という話をしたりする。
 
2,桃太郎の話で、大切な言葉を3つ書き出しなさい。
3,3つの言葉から、一番大切な言葉を選びなさい。
4,3つの言葉を入れて20字以内でまとめなさい。
 その時、桃太郎で終わる文にしなさい。
 (教室ツーウエイbV5p10〜11より引用)
 
<向山式要約指導法「段落要約指導法」>
 
1,「第一段落を20字以内でまとめなさい」と発問し、ノートに書かせる。
  子どもはあれこれ苦心して、書き出す。
  できた子は、黒板に書かせる。一人また一人と黒板に書いていく。
2,黒板に10人ほど書いたら、全員に書くのをやめさせる。
 「先生が採点していきます」といって採点していく。
 一つ読み上げ「これはとってもいいのですが、もうちょいですね」などと言って「2 点」などと書く。採点基準は、お分かりだろうけど、最も大切なキーワードが入って いれば4点、他に3つのキーワードとして、1つにつき2点というように定める。但 し、「日本語としておかしい」というものは、極端に減点する。
3,採点した後「もう一度書き直してごらんなさい」と言って、再度、ノートに書かせ る。採点をした後、その点数について説明する。つまり、「大切な言葉1つにつき何 点」と教えるのである。
4,そして、もう一度ノートに書かせる。
 「まだ黒板に書いてない人、黒板にでてごらんなさい」と指示する。
 8点、9点、10点の高得点が続出する。
 ここまで、ほぼ1時間である。これだけで子どもは、要約指導が大好きになる。
 黒板に出て書くのを何とも思わなくなる。
5,次の時間に、第2段落・第3段落をやる。この場合も黒板を使う。
6,3時間目は、ノートにその後の段落を要約させる。私の場合は、ノートにその後の 段落を要約させる。私の場合は、要約指導を3時間ほど続ける。
7,教材の全てを終わらなくてもいい。
 3時間すれば「要約」の基本的なことは身につけられる。
(教室ツーウエイbX6p22より引用)
 
<向山式要約指導 「段落要約指導」と「全文要約指導」の違い>
 
1,全文要約を30文字以内とする。
2,重要な段落を探させ、重要な一文を選び出す。
3,重要な一文を補完する文がある時は、その文も含める。
(教室ツーウエイbX6p24より引用)
 
<向山式要約指導 「全文要約指導」4つの法則>
 
 法則1 まずまとめの段落をさがす。文章全体のまとめは、最初の段落か最後の段落    にある。
法則2 まとめの段落から「考え」の文を探し出す。まとめの段落は、「考え・主張」    の文とそれを説明するエピソード・例示から成り立っている。例示の文は、文    頭に「たとえば」をつけてみればよい。
法則3 一段落が一文の時は、1つの文の中の大切なフレーズを探す。1つの文でまと    めの段落を構成しているときには、1つの「考え」と「例示」が含まれている    ことが多い。接続助詞に注目することで「考え」を特定できる。
法則4 最も大切な「一語」を選び、この言葉が文末にくるように「考えの文」をまと    める。
(教育トークラインbT1p11〜12より引用)
 
■1117093向山型要約指導の原理原則
  要約指導最大のポイントは、テンポよく評定していくことである。桃太郎の要約指導。 法則化島根ML推薦。 坂田幸義
                        
<段落要約指導の我流を排除する>
 
〜キ−ワ−ドを話し合わせる指導法は我流である〜
1.我流では応用が効かない 大賀由里子氏の論文(教育ト−クライン100号)によると、 大賀氏は向山先生の「桃太郎」の要約指導を以下のように追試されている。
@桃太郎の紙芝居を見せる。
A桃太郎の話を20字以内に要約させる。
B桃太郎の話から、キ−ワ−ドを3つ選択。
C3つのキ−ワ−ドの中から、1番大切な言葉(第1キ−ワ−ド)を選択。
D第1キ−ワ−ドを文末に置き、体言止めして、20字以内に要約。
 結果 「犬猿きじを連れて鬼退治をした桃太郎」 の要約文が完成したという。
 しかし、この方法だと「浦島太郎」の要約はできない。 なぜか?向山先生の原実践と比べて、見事に抜け落ちていることがあるからである。 要約文に点数をつけるという行為(個別評定)。
 例えば、「桃太郎はおともを連れて鬼退治しました。」は8点。 「昔、桃太郎が鬼ヶ島へ行って鬼退治をした。」は7点。 第1キ−ワ−ドの「桃太郎」が入っていれば4点、残り2つのキ−ワ−ド「犬・猿・きじ」「鬼退治」がそれぞれ3点。日本語としておかしいものは極端に減点、のような基準で点をつけていく行為が欠落しているのである。
 では、欠落するとどうなるのか。 キ−ワ−ドを話し合わせたり、説明したりしなくてはならなくなる。
 ここに、我流が入り込むのである。 「浦島太郎」にはキ−ワ−ドが多い。 「亀」「竜宮城」「乙姫様」「玉手箱」「おじいさん(年寄り)」「浦島太郎」など、単純に3つに絞るのは難しい。「3つ選びなさい」の指示ではムリなのである。
 原実践では、点をつけ評定し、その中で簡単な説明をテンポよく行う。 この行為によって、子どもたちは作業を通してキ−ワ−ドの取捨選択を無意識に行うことができる。
 よって、「桃太郎の話で大切な3つの言葉を書き出しなさい。」という指示(発問)が出されたときには、子どもたちはすでにキ−ワ−ドを意識した状態になっているのである。
 
2.桃太郎の要約指導をを段落要約指導にそのまま応用するという勘違い
 再び、大賀氏の実践である。
 『手と心で読む』の授業プランとして載せられた指示や発問を書き出してみる。
 
@段落には、いくつの文がありますか。
   3つ
A3つの文の中で、1番大切なのは、どの文ですか。線を引きなさい。
 それは、点字といってわたしたち目の不自由な者が、指でさぐって読む文字な のです。
  この文の中で、大事だと思う言葉を3つ選びなさい。
    ・点字
    ・目の不自由な者
    ・指
  3つの言葉の中で、1番大切なのは、どの言葉ですか。
    ・点字
@段落を20字以内にまとめます。1番大切な言葉「点字」で終わるようにします
    ・目の不自由な者が指でさぐって読む点字
 ジャンプしている発問がある。 「この文の中で、大事だと思う言葉を3つ選びなさい。」だ。 これは、「要約」の方法を「桃太郎」という最も分かりやすい教材を使って子どもに教えるときの方法であって、段落要約指導にそのまま使えるものではないのである。
我流は明白だ。
 キ−ワ−ドを3つ選ぶという指示や発問を段落要約の指導ではしてはならない。すれば、話し合いや説明が必要となる。桃太郎の要約のみに許される。
3.そして、原実践
 「桃太郎」の要約指導法。本家本元の向山先生の実践にもどってみる。 桃太郎の話を20字以内にまとめなさい。句読点も字数に入れます。
 20字にこだわらないで、まず、書いてご覧なさい。1度書いてしまってから、20字に削っていきなさい。 1分後にこの指示を出す。
  早く書けた子から板書。 点数をつける 。点数の解説

@桃太郎の話で大切な言葉を3つ書き出しなさい。
A3つの言葉から、1番大切な言葉を選びなさい。
B3つの言葉を入れて20字以内でまとめなさい。
Cそのとき、桃太郎で終わる文にしなさい。
 
 
 では、向山式の段落要約法はどうなっていたか。
【1時間目】
 第1段落を20字以内でまとめなさい。
 黒板に書かせる。 10人で終わり。
 採点 「先生が採点していきます」と言う
 解説・読み上げ、「これは、とってもいいのですがもうちょいですね」などと言って「2点」などのように書く。
「もう一度書き直してごらんなさい。」10人まで 。採点 、点数の説明、「大切な言葉1つにつき何点」と教える。
 まだ黒板に書いていない人、黒板に書いてご覧なさい
 
【2時間目】
 第2、第3段落を同様に行う。
【3時間目】
 ノ−トにその後の段落を要約させる。 もうお分かりであろう。 原実践では、
  「桃太郎」の場合
  点数(評定)→3つのキ−ワ−ド選び
 
<「段落要約」指導の場合>
 
(書かせて→点数→解説)という流れが基本形なのである。 これを混同して段落要約指導に「キ−ワ−ド選び」を持ち込むから、我流に陥るのである。