(C)Two-Way/小。中学校/小学1,2,3,4,5。6年生中学1,2,3年生/教科国語/単元名音読指導/音読指導


たかが音読 されど音読指導「音読指導以前」


松本 俊樹(TOSS兵庫播磨むしあなごの会)

音読指導以前に必須事項をまとめました。


1 音読指導以前にしなければならないこと

(1)教師が音読練習する

   熊本の椿原氏は100回読めという。
   そのもとは向山氏の指摘である。
   古今東西名人といわれた教師は皆同様の指摘をしておられる。
   芦田恵之助先生も森信三先生も斎藤喜博先生も大村はま先生、大西忠治先生、
   青木幹勇先生も・・・
   堰八正隆先生も、野口芳宏先生も・・・

(2)「題名の横に○を10個書きなさい」の指示。(向山洋一氏)

  1回読めば1個○を塗りつぶさせる。横に日付を書かせてもよい。
  教師の範読を聞いても1個ぬらせる。

(3)音読カードを作る

  私は作ってないが、娘の先生は作っておられる。
  必然的に家庭で音読練習につきあうことになる。

(4)聞き手を意識した音読練習をする


  人に聞いてもらうことである。
  家族に聞いてもらう。
  わが子に聞いてもらう。
  家庭団らんと教材研究の両方ができる。
  また、ビデオで撮る、録音するなどありとあらゆる方法がある。
  サークルの演習や模擬授業で聞いてもらう手もある。
  かなり緊張するが音読の力を高める良い方法である。

2 範読の技術

 3つの主張を紹介する。

 (ア)教室では教師こそが最高の読み手である(野口芳宏氏)

  これは範読でも最高の読みをしなさいと言う意味であろう。
  私も年に何回か「最高」の読みを示すことがある。
  学年スタートの物語教材の範読。
 「木竜うるし」(戯曲)「附子」(狂言)の範読。
  高学年児童でも範読後拍手喝采であった。

 (イ)範読をむやみにしない(向山洋一氏)

  範読することに下手な解釈が入り込む。
  それよりも子どもの読みを保障せよ。
  子どもの読みからスタートせよということであろう。
 (ア)の野口氏にも重なるところがある。
 「おおきなかぶ」の音読では「あまいあまいかぶになれ」の範読はされない。
  子どもに読ませる。そして検討させる。
  どう、何を検討させるかに付いては5の「音読と読み」で示す。
  また、「きつねのおきゃくさま」(あまんきみこ)の範読でも重要な箇所の 「 」は子どもに音読させている。
 (98年3月言語教育技術学会での模擬授業、「授業づくりネットワーク」○  ○年○月号)
  向山氏の場合「分からない言葉は○○でいいですから読んでご覧なさい」 という指示がある。
 「春」(安西冬衛)や「冬景色」の授業での指示である。
  大森修氏も「ガラパゴスの自然と生物」という題名でさえ範読されなかっ た。
  子どもに読ませる。「生物」を「せいぶつ」と読む。
 「『いきもの』と読まないのですか。」「それはなぜですか。」と追求する。
  これも5の「音読と読み」に関わる。
 
 (ウ)範読も指導である。(大森修氏)

 (その1)繰り返しふりがな読みの技術と思想

  次のような指示で範読をされる。
 「先生が読みますからふりがなを付けながら聞きなさい。」
 (98年12月鳥取での講座、99年2月京都での講座など)
  どの言葉に子どもはふりがなを付けるか。
  あらかじめ教師は予測できなければならないと大森氏は主張する。 
  その力量こそが子どもを見る目であるとも言い換えておられる。
  さらに重要な技術がある。
 「子どもが読めない、読み間違うだろうという言葉を2回読んで範読する。」
 「一つの花」の冒頭場面だと次のように読むことになる。

  「一つだけちょうだい。」
  これが、ゆみ子のはっきり覚えた最初の言葉でした。

  ひとつだけちょうだい。
  これが、ゆみこのはっきりおぼえた おぼえた さいしょの さいしょの ことばでした。
 
  単に新出漢字や読みかえ漢字だけを繰り返し読むのではない。
 「一つの花」では「配給」など子どもたちが初めて出あっただろうという言 葉も繰り返し読む。
 
  このように繰り返し読むことによって子どもたちにふりがなを書く時間を 保障することになる。
  このような指導を繰り返せばどのような変化が教室に起きるか。
  何も言わなくとも教師の範読時に繰り返す言葉が出ればすばやく鉛筆を走 らせる学級になる。
  学び方が身に付いた例である。

  一つ付加事項がある。ふりがなは欄外に書かせるということだ。御注とい う形に書かせる。
  本文中の漢字の横に書かせた場合いつまでもふりがなに頼って読むことに なってしまう。
  この指摘は野口芳宏氏による。

 (その2)つづけ読みの技術と思想

 「先生が読みますから先生の後に続けて読みなさい。」
  いわゆる続け読みである。
  このときのポイントは3つある。

 (a)範読後子どもたちが読み終わらないうちに次を読む。

  例を示す。
  教師「一つだけちょうだい。」
  児童「一つだけちょうだい。」
  このとき「一つだけ」と児童が読みかけたときに次の「これが、ゆみ子の ・・・」の部分を読み始めるのである。
  教室に集中と緊張感が走る。妙な間が空くことがない。
  この方法は「重ね読み」として野口氏も主張しておられる。

 (b)児童の読みのレベルにあわせて範読部分の長さを調節する。
 
  読みのレベルが低い場合は初めて出会う作品の時には当然のことながら
  教師の範読部分が短くなる。
  一文節となったり繰り返し範読することになる。
  次のような場合であろう。 
  ・読み間違い
  ・新出漢字
  ・こだわりたい言葉
  ・読みがそろわないとき


 (c)音読練習を重ねて子どもたちの読みのレベルが上がれば範読部分が長く   なる。

  当然教師の範読と児童の範読部分の重なりが大きくなるのでひととおり読 む時間もおおいに短縮される。
  読みのレベルの変容を自覚させることができる。

<以下続く>
3 音読練習のさせ方
(組み合わせ技も入れてのべ30を示します。)

4 音読指導の方法
(具体的な指導場面を示します。)

5 音読と読み
(音読指導がどう「読み」につながったかという例を示します。)






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