私が実践した
   問題解決学習の授業       松本 俊樹

 
1 問題解決学習では時数オーバー
 算数を問題解決学習で実践すると単元の時間数がオーバーしてしまう。
各授業時間もオーバーしてしまう。
それなのに肝心の学力が身に付かない。
 単元の導入では教科書を使わない。
代わりにワークシートを使う。
子供に興味をもたせるためだ。
5年生の面積の導入。
牛の絵が描かれたワークシート。
「どの肉を食べるか?」「広い所を食べよう」という課題。
牛の絵が平行四辺形や台形などに区切られている。
それぞれの図形の面積を測りどれこが一番面積が広いかを計算させるという意図。
その意図は分かる。
陣取りゲームなどでの広さくらべに似た実践である。
できるだけ広い部分を得るという日常生活に近づけるという授業者の意図。
しかし、本当に日常生活に近づいているか現実の問題を考えればよい。
肉は広さではない。
重さである。
 肉の部分が三角形、平行四辺形、台形等に分かれている。
三角形の面積の求め方の授業。
何が用意されていたか。
三角形のカードである。
色ボール紙製。
もちろん自作教材である。
教師が1枚1枚ていねいに三角形に切り抜いた。
しかも児童全員分用意。
2通り3通りの考えや切り方の失敗も予測して(児童数×3)は準備。
三角形を2枚使って平行四辺形を作らせる活動や、
三角形を切り長方形や平行四辺形(既習)に等積変形させて
面積を求めさせようという試みである。
 作業(操作活動)が始まる。
公式をすでに知っている児童はすぐに切り取って
長方形や平行四辺形に変換できている。
操作活動開始5分くらいである。
このようなカードを使わなければもっと短時間に公式を求めることができていただろう。
さて、切る、貼るの活動はどのくらい続いたか。
約25分間である。「底辺×高さ÷2」を求めることができた児童に何をさせるのか。
別の求め方を調べるのである。
しかし、1枚の三角形を2つ、3つにバラバラにしてパズル遊びを始める児童もあった。
この活動は本時に必要か。
無用である。
しかし、子供の自由な操作活動の名の下放任されていた。
授業者の意図に「様々な操作活動を通して公式の良さに気づく」とある。
「様々な活動」として認めざるを得なくなっていた。
 ところで公式を知らない児童はどのような活動をしていたか。
初めからパズル遊びだった。
授業の終末にきちんと公式を導くことができた児童の説明を聞くという流れだった。
練習問題を解く時間はなし。
このような方法で台形など他の図形の公式を導く授業で子供に力がつくわけがない。

 2 向山型算数こそ力を付ける
 向山洋一氏は5年生面積の導入の授業を「教室ツーウェイ」誌
(明治図書九二年十二月号p四四〜)に示している。
シンプルな導入でしかも一時間で「5年生の面積」の内容をほぼ終了している。
次のような流れである。
問題解決学習の授業との差は歴然としている。

1 黒板に長方形を書く。
2 6平方センチメートルと記入。
3 6平方センチとは、どういう意味なの ですか、ノートに書きなさい。
  できた人から持ってらっしゃい。
  (個別評定する)
4 1平方センチの正方形が何個分を考え るという面積の出発点に気づかせる。
5 長方形を対角線で半分に切り三角形を 示す。
6 「長方形の面積÷2」に気づく。
7 平行四辺形を示し「何通りかの方法で 解きなさい」と指示。(以下略)